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2023年6月13日(火)

主張

軍拡財源法案

採決は平和と暮らし破壊の道

 自民、公明の与党は13日にも、軍拡財源法案の参院財政金融委員会での採決を狙っています。法案は、岸田文雄政権が昨年末に閣議決定した安保3文書に基づき、敵基地攻撃能力の保有など、今後5年間で43兆円にも上る大軍拡の財源確保に向け、「防衛力強化資金」を創設するものです。憲法の平和主義を踏みにじり、国民の暮らし破壊につながる法案の採決強行は許されません。

敵基地攻撃を日米一体で

 何より法案によって財源を確保しようとしている敵基地攻撃能力の保有そのものが大問題です。

 敵基地攻撃能力は、日本独自ではなく、他国領域へのミサイル攻撃を含む、米国の「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)の一翼を担い、米軍の指揮統制下で運用される危険が明らかになっています。

 安保3文書は、「統合防空ミサイル防衛」の強化をうたうとともに、敵基地攻撃について「日米が協力して対処」するとし、「情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築する」と明記しています。

 本紙日曜版5月28日号が報じた防衛省内部文書は、敵基地攻撃での日米共同の「オペレーション」(作戦)として、攻撃目標の情報収集・分析、計画の立案、攻撃する目標の分担、実際の攻撃、戦果の評価という「サイクル」を繰り返すことを図示しています。

 自衛隊元幹部など専門家は、自衛隊には他国領域にある攻撃目標の情報を把握する能力がなく、米軍に頼るしかないのが実態だとし、そのため、自衛隊は攻撃に際し米軍の指揮統制を受けざるを得ないと指摘しています。政府は、敵基地攻撃は「必要最小限度の実力行使にとどまる」としていますが、米軍の判断で敵基地攻撃がエスカレートすれば、自衛隊も付き従うことになるのは明白です。相手国から反撃を受け、日本が深刻な被害を受けることも必至です。

 加えて、今回の軍拡財源法案をはじめ、岸田政権の大軍拡のための財源案は、将来にわたり国民に新たな負担を押し付けるものとして極めて重大です。

 同法案で創設される「防衛力強化資金」は、防衛省が複数年度にわたり自由に使えます。会計年度ごとに予算を作成し国会で審議する単年度主義=財政民主主義の破壊です。法案はまた、国立病院と社会保険病院など公的病院を運営する二つの機構の積立金を軍拡財源に回します。医療提供体制の強化や職員の待遇改善に使うべき資金の流用は認められません。

 岸田政権は昨年末、東日本大震災の復興特別所得税の課税期間を延長し軍事費に転用することを決めています。また歳出削減で財源をつくるとし、教育、中小企業、農業予算などが削られた上、社会保障予算のさらなる削減の恐れもあります。歳入・歳出の差額である決算剰余金も軍事費に充てるとしていますが、その元になる巨額の予備費は赤字国債が原資です。未来の世代にばく大な増税を強いることになりかねません。

平和の枠組みの発展こそ

 政府が今やるべきことは、東アジア地域の分断と対立を拡大し、際限のない軍拡競争を招く軍事力の強化ではありません。憲法9条を生かし、地域の全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させる外交努力こそ必要です。


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