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2023年6月9日(金)

主張

「労働市場改革」

働くルール確立が政治の責任

 岸田文雄政権が「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)の原案で「労働市場改革」を掲げています。労働市場を活発にして「労働移動」を促進すれば「構造的な賃上げ」を実現できると言いますが、「構造的な賃下げ」になりかねません。雇用を市場原理にゆだね、労働法制を改悪してきたことが、賃金が上がらない構造をつくりだしました。労働者の暮らしと権利を守る、働くルールの確立が政治の責任です。

賃上げにはつながらない

 骨太の方針は「リ・スキリング(学び直し)による能力向上支援」「職務給(ジョブ型人事)の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」の「三位一体の労働市場改革」を打ち出しました。

 「ジョブ型」は経団連が導入を促進している雇用形態です。

 欧米で普及している「ジョブ型」は、職務に必要な能力、経験、資格などを明確にした上で、労働者の採用や賃金を決める仕組みです。採用後に成果を評価して賃金を決める仕組みではありません。

 日本で導入しようとしている「ジョブ型」には成果主義が持ち込まれています。労働者に自己責任を押し付け、賃下げや長時間労働につながります。職務がなくなった後の雇用も保障されません。企業にとって使い勝手のいい、安上がりな働かせ方です。

 骨太の方針は「労働移動の円滑化」の一環として「退職所得課税制度の見直し」を明記しました。転職を促進するために、長く勤務した労働者の退職金に課税を強化する方針です。労働者から批判が上がっています。

 成長分野に労働者を転職させても賃金水準は上がりません。日本の労働者の7割は中小企業で働いています。そこでの賃上げこそ決定的です。骨太の方針が示したのは、賃上げ企業への優遇税制くらいで、まともな中小企業支援策がありません。

 賃上げ税制は、赤字経営の中小企業には恩恵がなく、安倍晋三政権以来、長期間実施して効果のあがらなかった政策です。

 最低賃金についても全国加重平均1000円を今年達成するとしているだけで、ただちに1500円以上を求める労働組合の要求には一言も触れていません。

 「労働移動の円滑化」は、経済財政諮問会議に代表を送り込む財界・大企業の積年の要求です。

 多くの買い手と売り手が激しい競争を繰り広げるのが市場です。雇用・労働分野では雇用主が圧倒的に優位な立場にあります。法的な規制を緩めたことで、働くルールが壊され、労働条件が悪化しています。

差別なくし正社員化を

 1990年代からは労働法規のたび重なる改定によって非正規雇用が拡大しました。非正規は今や女性労働者の5割以上、男性労働者の2割以上を占めています。正規と非正規、男女によって大きな賃金格差があります。

 子育て、介護など人生のさまざまな事情や仕事のキャリアを考えて転職しようとしても、正規から非正規にならざるをえなかったり、収入が減ったりすることが多いのが実態です。雇用形態や性別による差別をなくすとともに、「正社員が当たり前」「1日8時間働けば暮らせる社会」を実現することが不可欠です。


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