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2023年5月24日(水)

被爆者怒るG7サミット

テレビはどう報じたか

 被爆地・広島で開かれたG7広島サミット。テレビはNHKを中心に岸田文雄首相はじめ、G7首脳らの原爆資料館訪問や献花などを逐一生中継しました。そして「“核軍縮に焦点をあてた”初のG7」(21日、NHK「ニュース7」)などと無批判に持ち上げました。

 たとえば、22日のNHK「ニュースウオッチ9」は、「被爆者からは厳しい声があがっている」として、カナダ在住の被爆者、サーロー節子さんの「何も新しいものはない。胸がつぶれる思い」という声を紹介しながら、田中正良キャスターは、「(日本の)外交の力、存在感を示したといっていい」とまとめました。

 21日の日本テレビ「真相報道バンキシャ!」では、ジャーナリストの池上彰氏は、G7首脳宣言について、「核兵器は絶対使ってはいけないというメッセージにはなったのかなと思う」と賛美。

 21日のフジ系「Mr.サンデー」は、この日の動きを振り返り、「歴史的転換点となるのか」とあおり気味の字幕を連ね、“歴史的な1日”と強調。フジテレビの松山俊行政治部長が「核の脅しに屈しない」というロシア包囲網ができたと説明、「今回のサミット、すばらしかった」。

 これら手放しの“評価”に代表されるように、ロシアの「核の威嚇」に対抗する「広島から反核のメッセージ」という図式をそろって強調。視聴者に「岸田首相はよくやった」と“成果”を押し付けることになりました。

 被爆地から核兵器に固執する宣言を出すという許しがたい「矛盾」、「失敗だ」と断じた被爆者の怒りへの言及はなく、今回のG7サミットが「軍事対軍事」の危険な悪循環をつくり出していることの検証もありませんでした。結果として、岸田政権の軍事国家づくりを後押ししていると言わざるを得ません。

 一方、「被爆者はどんな思いで見守ったのか」と特集した21日のTBS系「サンデーモーニング」なども。

 同番組にコメンテーターとして出席したピースボート共同代表の畠山澄子さんは、「核抑止力を肯定する文言が明確に入っている。とても受け入れられない」とのべ、文書に「核兵器禁止条約」などの言葉が入っていないことを指摘。同日の朝日系「サンデーステーション」では、2016年に広島を訪れたオバマ米大統領に抱き寄せられた被爆者の森重昭さん(86)が、「核なき世界」への道のりは、「けわしい」とのべ、「ちょっと待ってくださいと言いたい。軍事対応がエスカレートしたら最後には核兵器に行き着く」と“成果”に疑問を呈しました。

 被爆者団体やNGOが「核兵器禁止条約に参加を」「核兵器はただちに廃絶を」と声をあげたことをほとんど報じなかったことも記憶にとどめる必要があります。(藤沢忠明)


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