しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年5月22日(月)

主張

軍拡財源法案

違憲の立法 徹底審議で廃案に

 今年度から5年間の軍事費に43兆円もの巨額をつぎ込む大軍拡に向けた軍拡財源法案が、19日の衆院財務金融委員会で、自民・公明両党などの賛成で可決されました。法案は23日の衆院本会議で採決され、可決されれば参院での審議に移ります。日本とアジアの平和を脅かす敵基地攻撃能力保有をはじめ大軍拡を推進するための憲法違反の法案は、徹底審議の上、廃案に追い込まなければなりません。

医療の資金まで回す

 岸田文雄政権が昨年末に決めた安保3文書は、2023~27年度までの軍事費総額を43兆円にするとしています。政府は、そのために14・6兆円の追加歳出が必要になるとし、▽税外収入による「防衛力強化資金」の創設▽決算剰余金の活用▽税制措置(増税)▽歳出改革―で賄うとしています。軍拡財源法案は、この重要な柱である「防衛力強化資金」の創設を定めるものです。

 政府は、特別会計などの流用による税外収入で4・6兆円を確保し、うち1・2兆円を23年度の軍事費に充て、残りの3・4兆円を「防衛力強化資金」に繰り入れ、24年度以降の軍拡に使うとしています。同資金は、防衛省が複数年度にわたって自由に使える「ポケットマネー」とも言えるものです。会計年度ごとに予算を作成し国会で審議する「単年度主義」=財政民主主義に反します。

 4・6兆円の税外収入には、国立病院機構や、社会保険病院などを運営する地域医療機能推進機構の積立金の一部を返納させることも含まれています。国公立病院は老朽化のため改修が必要な施設が多く、医療機器が購入できなかったり、看護師の大量離職が起きていたりするなど対応が急務です。医療に回すべき財源を軍拡に回すのは本末転倒です。

 このほか、国の会計で歳入が歳出を上回った差額である決算剰余金の活用では、3・5兆円が見込まれています。決算剰余金はこれまで、補正予算の財源に充当されてきました。これを軍拡に回せば補正予算の財源が不足し、赤字国債の増発が避けられません。「国債ロンダリング(洗浄)」との批判が起きているのは当然です。国債を軍拡の追加財源にはしないとする政府の説明とも矛盾します。

 政府はまた、増税によって最大3・5兆円を確保しようとしています。昨年末に決めた「税制改正大綱」は法人税、たばこ税の増税に加え、復興特別所得税の約半分を軍拡財源に回すことにし、来年以降に実施するとしています。東日本大震災の被災地復興のための財源を軍事費に転用することには大きな批判が起こっています。法案の委員会採決前に地方公聴会を開いて被災者の声に耳を傾けるべきだったにもかかわらず、自民・公明両党は応じませんでした。

消費税増税の危険も

 加えて政府は、歳出改革によって3兆円強を捻出しようとしています。「社会保障関係費以外」で行うとしていますが、医療や介護、年金などの改悪が続いており、その保証はありません。27年度までの大軍拡の後も軍事費をさらに増やすことなどになれば、消費税増税や社会保障関係費のさらなる削減が狙われることは明らかです。

 法案を廃案に追い込むため、世論と運動をいっそう大きくすることが必要です。


pageup