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2023年5月20日(土)

堺市長選あす告示 維新が切り捨てた住民サービス

野村予定候補勝利で復活へ

記者座談会

 堺市長選が21日告示(6月4日投票)されます。日本共産党も参加する「住みよい堺市をつくる会」が自主支援する元市議、野村ともあき氏(49)が大阪維新の会の現職、永藤英機氏(46)に挑みます。選挙戦の様相を担当記者で話し合いました。


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(写真)市長選勝利へ決意を固め合う野村氏(左端)と参加者=13日、堺市

  堺市政をみていると、ああこれが維新流の「改革」なのかと思わせるね。

維新流の「改革」

  野村氏が「まやかしの『財政危機宣言』で住民サービスを次々切り捨てた」と批判している事例が典型的だ。

  維新創設者の橋下徹氏が大阪府知事に就任した時、「大阪府は破産会社」と宣言して、「身を切る改革」を売り物にした。

  現大阪府知事で大阪維新の会代表(日本維新の会共同代表)も、“維新は「改革」で財源を生み出し、次世代に投資する”と自画自賛する。「改革」の中身が問題だけどね。

  そのいわば維新流の「改革」の方程式に無理やり堺市をあてはめようとしたのが、永藤市政の4年間だった。

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(写真)古墳群に囲まれた堺市の街並み

資金枯渇はウソ

  永藤市長の「財政危機宣言」はいかにも唐突だったね。「宣言」をしたのは2021年2月。「恒常的な収支不足が発生し、基金(貯金)を取り崩して財政運営」を行っているが「基金も近い将来に底をつく」見込みだと危機感をあおり、同年10月に「脱却プラン」を発表した。

  ところが、翌22年の2月になって早くも「底をつかない」ことが明らかになった。22年度の予算案を発表したさいに、市は収支見通しを公表した。枯渇するはずだった30年度末に基金は416億円残るという試算だった。もともと「財政危機宣言」は政治的パフォーマンスにすぎなかったということだ。

  それでも「脱却プラン」は断行されたんだよね。実施予定だった0~2歳の第2子保育料無償化を「無期延期」、保育士処遇改善補助の半減、小中学生の学習支援の廃止、泉北高速鉄道通学定期代補助の廃止、日高少年自然の家の閉鎖などだ。その一方で、新たな交通システムの導入やベイエリア活性化などを打ち出したのは何ともちぐはぐだった。

市民が動かした

  ただ、さすがに堺だ。維新の言いなりにはならない。65歳以上の市民が路線バスや阪堺電車を1乗車100円で利用できる「おでかけ応援制度」の改悪案は2度も提案されたが、反対の市民運動を背景にいずれも議会で否決された。

  永藤市政は今年1月末になってようやく「基金が枯渇し予算編成が困難となる状況は回避できる」めどがたったなどとして「財政危機宣言」を解除した。永藤氏は「(コロナ禍で)思っていたほど税収が落ち込まなかった」といまになって弁明している。延期されていた0~2歳の第2子保育料無償化もようやく実施されることになった。

  永藤氏は市長選を前に自らの「改革」の実績かのように宣伝しているが、とんでもない。市民の運動が政治を動かした結果だ。候補者討論会でも、永藤氏が強調する子育て・健康長寿支援とサービス切り捨ての矛盾を突かれ、答えに窮していた。「おでかけ応援制度」の縮小案について「再提案はしない」と言わざるを得なくなった。

“好循環プラン”

  野村氏は、切り捨てられた住民サービスを可能なかぎり復活させ、拡充することで好循環を生み出すと訴え。▽日本一の子育て・教育▽人生100年時代の健康づくり▽豊かなまちへの積極投資▽現場主義市長の本気の改革―の柱からなる100項目の公約を発表した。小学校給食の無償化継続、市独自の給付型の奨学金の創設、教員不足の解消、「おでかけ応援制度」の拡充などきわめて具体的。大阪府言いなりで「顔が見えない市長」と言われる永藤氏とは対照的だ。

  永藤氏の演説を聞いていても語るべき実績がなく、ビジョンが見えない。大仙公園のガス気球の運行もガス漏れで延期。強調するのは、「府市一体の成長戦略」だが、その一つが大阪カジノの玄関口と位置付けるベイエイア開発ではね。

終止符を堺から

  大阪市を廃止する「大阪都」構想は2度の住民投票で否決され、当時の大阪市長だった橋下徹氏、松井一郎氏がそれぞれ政界引退に追い込まれた。永藤氏も大阪市だけでなく堺市もなくす「都」構想が争点となった前々回市長選で「堺市をなくすな」「自治都市・堺を守れ」という市民の民意に敗れた。

  前回市長選で永藤氏は当選したが、現職市長が政治資金問題で辞任し、急きょ立候補したにもかかわらず野村氏が僅差に迫った。維新側は、相当危機感をもっているね。永藤氏の後援会事務所開きでも複数の弁士が口にしていた。

  先の堺市議選の結果も響いているのだろう。定数48に対して維新は前回と同じ18議席にとどまり、過半数には遠く及ばなかった。一方、維新政治と正面から対決する共産党は1増の5議席となった。

  「吉村人気」にあやかろうと、永藤氏のポスターは吉村洋文氏とセットで、永藤氏の街頭演説の呼び込みも「吉村知事が間もなく来ます」。

  その吉村知事が語る維新の「改革」の中身が、いま問われている。「身を切る改革」と称して切ってきたのが、定数削減による民意の切り捨てであり、職員であり、病院であり、病床だった。それが、コロナ感染死者が全国最悪という事態を招いた。

  納税者が納得する政治といいながら、公費負担がどこまで膨らむかわからないカジノの夢洲(ゆめしま)誘致に熱中する。「ギャンブル頼みの成長戦略」とはあきれる。

  「もののはじまりなんでも堺」といわれるが、「維新政治の終わりの始まりも堺から」といきたいね。「堺のことは堺が決める」という自治意識が根付く堺市民の選択が注目される。


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