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2023年5月19日(金)

主張

電気料金値上げ

社会的責任投げ捨てる負担増

 電力大手のうち7社が申請していた家庭向け電気料金の大幅値上げを岸田文雄政権が了承しました。価格カルテルなど不正続きの電力大手が家計に耐えがたい重荷を負わせることは許されません。容認した政府の責任も重大です。

カルテルなど不正究明を

 値上げされるのは経済産業相の認可が必要な規制料金です。燃料費の高騰を理由にしています。平均の上げ幅は、北陸電力で39・7%、沖縄電力43・4%とほぼ1・4倍です。東京電力は15・9%の引き上げです。6月1日に実施され、7月請求分の料金から負担が増えます。

 電気料金は、電力会社の裁量で上げられる分の値上がりで、すでに急騰しています。

 暖房で電力消費が増える冬季に家計が支払った電気代は総務省の家計調査によると、1~3月合計で5万3000円を超えました。前年比で約8600円増えました。寒冷地ではさらに大きな負担増だったはずです。その上に規制料金の値上げです。今後、気温が高い時期に冷房の使用を控えざるをえなくなれば命にかかわります。

 電力大手には以前から、独占的利益を確保するために各社が連絡して不正に料金を取り決める価格カルテルの疑惑がありました。

 公正取引委員会は3月、関西、中部、中国、九州電力の4社が2018~19年にカルテルを結んでいたことを認め、関電を除く3社に過去最大となる総額1010億円の課徴金支払いを命じました。

 カルテルを呼びかけたのは関電でした。公取委が把握する前に自己申告したことで、関電が独占禁止法上の処分を逃れたことが批判を浴びています。

 電気事業連合会の会合がカルテルに利用されたことも判明しています。業界全体の関与が疑われます。

 このほか大手全10社は、競争相手である新電力の顧客情報などを少なくとも76万件、配送電の子会社を通じて不正に閲覧していました。再生可能エネルギーを扱う新電力の排除を狙った行為です。

 関電では不正閲覧した社員726人の3分の1以上にあたる262人が違法な営業活動への利用を行っていました。違法性の認識すらない社員もいたといいます。

 これらの実態は電力会社自身の調査で示されました。うのみにするわけにはいきません。

 カルテルも不正閲覧も電気料金の設定にかかわる問題です。政府の公聴会でも厳しい意見が噴出していました。公益企業として社会的責任が問われます。値上げは撤回すべきです。

政府の責務放棄する認可

 岸田政権は、不正が電気料金に及ぼした影響を算出することは困難だとしています。不正をこれ以上調査しない考えも示しています。「価格激変緩和対策」は9月までに限られています。値上げの了承・認可は、国民の暮らしを守る政府の責務を放棄するものです。

 電力大手は発電設備の8割を保有し、発電・販売は事実上一体です。大手が圧倒的な市場支配力を維持していることに根本的な問題があります。電力市場に公正なルールを確立し、再生可能エネルギーの普及を本格的に進めることが不可欠です。電気料金については消費者が参加する公的な規制の仕組みを強める必要があります。


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