しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年5月18日(木)

主張

LGBT法案

差別に苦しむ人を放置するな

 LGBTQなど性的少数者の権利と尊厳を守る法整備に、またも逆流が持ち込まれています。日本は主要7カ国(G7)で唯一、同性婚が認められず、性的少数者の差別禁止を明記した法律もありません。19日からのG7広島サミットの前に、自民党はかつて野党と合意した内容をほごにする「LGBT理解増進法案」を国会に提出する方針です。法整備に反対する党内意見を優先した自民党に批判が集中しています。

妨害する自民の責任重大

 理解増進法案は2021年、超党派の議員連盟で協議が行われ、差別禁止が明記されていない不十分さなどはあるものの、法の目的や基本理念に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」との文言を盛り込み、合意に至りました。ところが国会提出直前、自民党内で「LGBTは道徳的に許されない」などの差別と偏見に満ちた異論が噴き出し、当時の法整備はとん挫しました。

 今年2月、同性愛者への差別発言をした首相秘書官が更迭されたことを機に、改めて法整備を求める声が強まりました。G7サミットでは、共同声明に性的少数者の権利保護を明記する方向で調整が進んでいます。日本の議長国としての姿勢が問われる局面の中で、2年前の与野党合意案を速やかに国会に提出し、成立させることが求められています。

 しかし今回も自民党内で法制定への反対論が相次ぎました。「差別禁止でなく、もう少しおおらかな形で」(西田昌司参院議員)などの意見に配慮し、「差別は許されない」から「不当な差別はあってはならない」に表現を後退させました。「正当な差別」などありません。これでは差別の温存です。

 「性自認」を「性同一性」にすることも重大です。どちらも英訳では同じ言葉ですが、「性同一性障害」のように医学分野で使われてきた言葉に、あえて置き換えるといいます。本人の自己認識を尊重せず、「障害」と診断された場合のみ当事者として認める恐れなど、対象が狭められかねません。

 学校の教育環境整備についても否定的意見が出され、大きく変更されました。周囲の無理解や偏見に苦しむ子どもの存在に想像が及ばないのでしょうか。

 時事通信の世論調査(3月)では、理解増進法を今国会で「成立させるべきだ」が50・8%でした。「世界は『差別禁止』だ。日本はその前段階の『理解増進』を国会に出すのすら議論している…恥ずかしい」(経団連の十倉雅和会長、3月20日の会見)との声も上がります。国民世論も経済界も前向きです。唯一足踏みしているのが岸田文雄政権であり、自民党が最大の妨害者となっています。

当事者の困難は依然深刻

 LGBTQの認知は広まったとはいえ、当事者の困難は依然深刻です。当事者の支援事業などを行うNPO法人の22年調査では、10代当事者の48%が自殺を考え、14%が自殺未遂、38%が自傷行為を経験したと答えました。おとなも職場で差別されたり、性の多様性を前提としない社会の仕組みにぶつかったりと、苦悩しています。

 差別と偏見に苦しむ人を、これ以上放置してはなりません。少数者の人権を尊重することは、全ての人の生きやすさにつながります。政治は責任を果たすべきです。


pageup