2023年5月12日(金)
主張
ローカル鉄道危機
国は維持・存続に責任を果たせ
赤字ローカル鉄道に関する改定地域公共交通活性化・再生法が4月、与党などの賛成で成立しました。日本共産党は反対しました。同法に基づいて、採算が難しい路線の存続を話し合う再構築協議会が今後各地で設置されます。公益事業としての鉄道の役割と、国の責任を明確にしなければ、廃線やバスへの転換が一段と進みかねません。
分割・民営化の総括必要
再構築協議会は、国が主導して地元自治体と鉄道事業者がローカル線のあり方を話し合う仕組みです。輸送密度(1キロあたり1日の平均利用者数)1000人未満の路線が対象とされ、3年以内に結論を出すことが求められます。国土交通省によると全国で62路線、103区間あります。赤字路線の削減が進めば、地方の衰退がいっそう深刻化します。
1987年に国鉄を分割・民営化した際に掲げた原則は、JR各社が都市部の路線や新幹線、関連事業の収益で不採算部門を含めた鉄道網を維持することでした。今のローカル線危機は、この政策が破綻した結果にほかなりません。
国は、人口減少や地域経済の疲弊で苦しむ路線にまともな支援をせず、2000年には、認可制だった路線廃止を事前届け出制にして、赤字路線の切り捨てを促しました。
全国どこに住んでいても自由に移動できるのは国民の権利の一つです。鉄道網を切り刻むことは国の責任放棄です。
鉄道は通勤、通学、通院、買い物をはじめ生活に欠かせない移動手段です。自動車を運転しない人、運転できない人にとっては特に貴重なものです。観光や産業振興にとっても大切です。
採算や収益性だけを基準に便数や路線の削減を進めたことが、人口減少、地域経済の衰退、過疎化の悪循環を招いています。地方の再生にとってローカル線の活性化は欠かせません。
脱炭素社会を実現するためにも二酸化炭素排出が少ない鉄道の利用拡大が重要です。
再構築協議会では廃線やバス転換ありきではなく、鉄道輸送を維持する方針を検討すべきです。そのためにも国が路線存続の義務を負うことが決定的です。鉄道事業の廃止手続きは認可制に戻す必要があります。運賃を関係者の合意だけに基づく届け出制にする協議運賃制度はやめるべきです。
全国の鉄道網を将来にわたって維持・活性化するためには、分割・民営化以来の国の施策を総括し、JRのあり方を根本的に見直さなければなりません。
民間・地方まかせ改めて
日本共産党は、完全民営のJRを「国有民営」に改革することを提案しています。国が線路や駅などの鉄道インフラを保有・管理することで事業を安定させることができます。運行は引き続きJRが行います。この上下分離方式は欧州では当たり前となっている仕組みです。財政基盤の確保や鉄道の災害復旧制度も提起しています。
収益性だけに基づいて路線を削減しても、鉄道事業の展望は開けません。「民間まかせ」「地方まかせ」だった歴代政府の姿勢が厳しく問われています。将来にわたって持続可能な事業に改革するために何が必要か、国民的な議論が求められます。