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2023年5月2日(火)

国会異常事態

日本のあり方覆す悪法次々

 原発推進法案、保険証廃止のマイナンバー法案、外国人の人権無視の入管法改悪法案など、今国会では、日本のあり方を変える悪法が次々と可決され、参院に送られています。連休明けには、軍拡財源法案、軍需産業支援法案など大軍拡推進の悪法の採決も狙われています。なぜこんな異常事態になっているのか―。

軍拡・原発・マイナンバー・入管… 拙速審議

 4月末に衆院で相次いで採決された法案は、命や暮らし、平和にかかわる悪法ばかりです。本来であればそれぞれの法案が一つの国会、あるいは2国会またいで審議されるような重大法案です。

 27日に衆院本会議で可決された原発推進等5法案は、原発の活用を「国の責務」と明記し、70年超の老朽原発の運転を可能にするもの。福島第1原発事故の教訓を投げ捨て、「原発回帰」へと大きくかじをきる法案です。

 この本会議では、健康保険証を廃止し、マイナンバーカードの取得を強要するマイナンバー法等改定案も可決されました。

 翌28日の衆院法務委員会では、入管法改悪案が可決。難民申請に上限を設け、3回目以降の申請者は申請中でも母国への送還を可能にするなど、日本に住む難民や移民の命と人権を脅かす多くの問題があります。

 岸田政権が推し進める大軍拡を具体化するための法案の審議も進められています。27日には、国内軍需産業の基盤を強化するための財政支援措置を盛り込んだ軍需産業支援法案が衆院安全保障委員会で可決されました。5年間で43兆円の大軍拡のために、防衛力強化資金を創設する軍拡財源法案をめぐっては、自民党が連休明けの5月9日の採決を提案。緊迫した状況になっています。

 いずれも、徹底した審議が求められる重大な法案ですが、国民の声も聞かずに拙速な審議で採決が推し進められています。

 マイナンバー法等改定案の委員会質疑時間は参考人質疑を含めて4日間、13時間あまりしか行われていません。軍需産業支援法案に至っては、参考人質疑を含めて3日間、8時間程度の質疑だけで採決が行われました。

 採決の日程が提案されている軍拡財源法案をめぐっては、日本共産党や立憲民主党などが国民の声を聞くための公聴会の開催を求めていますが、実現していません。

 日本共産党の志位和夫委員長は27日の記者会見で、「このような重大な法案がまともな審議なしに次から次へと通されたことはかつて経験したことがない重大な事態であり、強く抗議する」と表明しています。

暴走自公 維・国が「修正」先導 悪政推進

 どうしてこんな異常がまかり通るのか。それは岸田自公政権の暴走を、維新・国民民主の補完勢力が「修正」協議を先導するなど、悪政推進に積極的に協力しているからです。

 原発推進法案でも入管法改定案でも、自公と維新、国民の間で「修正」協議が行われ、採決されていきました。

 象徴的なのが原発推進法案です。法案「修正」の提案・趣旨説明は維新が行い、付帯決議も維新の提案でした(4月26日、衆院経済産業委員会)。

 しかも「修正」の中身は、自公案をさらに改悪するものです。

 原子力規制委員会による原子炉設置の「許可等に係る審査の効率化」を法案に盛り込み、政府が原子炉施設の「安全の確保のためのあり方等について検討を加える」としました。再稼働が思惑通り進んでいないもと、原発推進を最優先に、安全確保の体制や規制を見直そうと露骨にうたっています。福島原発事故の教訓である「規制と推進の分離」を逆行させる重大な内容です。また原発推進に対し「国民の協力」を得ることを「国の責務」に加えました。

 本会議(同27日)の賛成討論で維新の足立康史議員は「わが党が主導した修正協議」と自賛したうえ、「原発立地地域の関係者は原子力について理解しており、だから再稼働も進展し、ALPS処理水の海洋放出の準備も進んでいる」などと強弁。原発事故を受けて新設された原子力規制委員会の任務、組織の在り方について「不断の見直しが必要なことは言うまでもない」として、規制と推進の分離を「見直す」姿勢を強調しました。

 国民民主の浅野哲議員(日立製作所出身)も、「次世代革新炉を含む原子力発電の利活用」はじめ「現実的なエネルギー供給体制の構築を急ぐ」としました。

 自民党の閣僚経験者の一人は、「地方選での維新の勢いはすごかった。自民党はいま、維新にものすごく気を使っている」と指摘。そのなかで「原発や憲法など、維新が同じ立場で協力してくれることはものすごく助かる」と語ります。

 岸田政権と自公はもともと、敵基地攻撃能力の保有を盛り込む予算審議のあと、4月の統一地方選・衆参補選や5月のG7サミットというひっ迫した日程のもと、重要法案を連休前に衆院通過させるもくろみでした。メディア関係者の一人は「補選で無党派の6割が野党に投票するなど自民党政治への不満が示される中で、地方選で伸長した維新が政権への協力を強め、与党には非常にやりやすい状況だ」と語ります。

立民 軍需産業支援法には賛成

 一方こうした状況の中で立憲民主党はどうか。

 原発推進法案、入管法改悪案などでは反対の立場を貫きましたが、軍需産業支援法などには賛成しました。岸田政権の暴走に対する態度が問われます。

市民と連帯 共産党が徹底追及 正面対決

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(写真)原発推進法案を賛成多数(自公維国)で可決した衆院経産委。手前は反対して着席する日本共産党の笠井亮議員=4月26日

 こんな異常事態に正面から対決しているのが日本共産党です。国会周辺で「採決するな」「廃案に」など連日繰り広げられている市民の反対行動と連帯し、論戦で悪法の問題点を徹底追及してきました。

 日本共産党の笠井亮議員は27日の衆院本会議で、原発推進等5法案の反対討論で、東京電力福島第1原発事故は「いまだ終わっていない」と強調。同法案について、原発利活用を「国の責務」と明記し、将来にわたり原発利用を固定・永続化し、原発事故の反省と教訓から生まれた「原発運転期間の原則」「推進と規制の分離」を踏みにじると批判。多くの国民が願う「原発ゼロ」への転換をと強く求めました。

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(写真)質問する塩川鉄也議員=4月25日、衆院地こデジ特委

 日本共産党の塩川鉄也議員はマイナンバー法等改定案について、25日の衆院地域・こども・デジタル特別委員会での反対討論で、連日、多くの人々が「健康保険証廃止やめよ」と反対の声をあげていると指摘し、マイナ保険証利用の押し付け、保険証の廃止は撤回すべきだと迫りました。

 日本に住む移民、難民の命をさらに危うくする入管法改悪案は、国連人権理事会の特別報告者らが「国際人権基準を満たしていない」として抜本的な見直しを求めています。

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(写真)入管法改悪案の反対討論に立つ本村伸子議員=4月28日、衆院法務委

 日本共産党の本村伸子議員は、衆院法務委員会で繰り返し「保護すべき人を保護できない」と指摘。「本法案を撤回し、国際人権基準に沿った人権尊重の制度に見直すことを強く求める」と訴えました。

 岸田政権の「安保3文書」に基づく悪法も重大です。日本共産党の赤嶺政賢議員は27日の衆院安全保障委員会で、国内軍需産業の基盤を強化するための財政支援措置を盛り込んだ「軍需産業支援法案」について、国が採算のとれない軍事企業の製造施設を買い取り、設備投資や維持管理を負担せずに経営できるようにするものだと批判しました。

 日本共産党の志位和夫委員長は27日、国会内の記者会見で、各分野で起こっている岸田政権の暴走政治に対するたたかいをあげ、「国民運動を広げていくために日本共産党も全力を尽くしたい。この力で一連の法案を止め、来たるべき総選挙で岸田政権に審判を下したい」と決意を語りました。


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