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2023年5月2日(火)

主張

日銀の政策検証

異次元緩和の害 総括してこそ

 日本銀行は、植田和男総裁が就任後、初めてとなる金融政策決定会合(4月27~28日)を開き、25年間続けてきた金融緩和政策の「レビュー(検証)」を行うことを決めました。黒田東彦(はるひこ)前総裁のもとで10年間続けられてきた「異次元の金融緩和」は継続します。物価高騰で国民を苦しめ、経済にゆがみをもたらした政策の総括が必要です。

物価押し上げ経済ゆがめ

 1990年代末から長期にわたって続く金融緩和の中でも異次元緩和の異常さは際立っています。

 異次元緩和は、2%の物価上昇を目標に大規模な金融緩和を行い、経済に好循環を生み出すという政策です。中央銀行の“禁じ手”とされてきた手法を次々に繰り出しました。

 日銀は2013年、「銀行券の発行残高以上は国債を保有しない」という自らのルールを撤廃し、金融市場から大量の国債を購入してお金の供給を2倍以上に増やしました。

 国債の購入はその後増え続け、16年にはマイナス金利政策も導入しました。しかし「好循環」どころか、経済の低迷が続き、賃金も抑制されました。

 欧米の中央銀行がリーマン・ショック時に導入した金融緩和策を終了したことで日本との金利差が開き、円安が一段と進みました。ロシアのウクライナ侵略に伴う国際市場の混乱では円安が輸入物価を押し上げ、特にエネルギー、食料品価格が急騰しました。

 異次元緩和は財政と金融にかつてないゆがみをもたらしました。日銀が保有する国債はいまや発行残高全体の50%を超え、国の借金の半分を中央銀行が引き受けています。日本の財政に対する信頼を損なう事態です。

 日銀は、大企業の株式で構成される上場投資信託(ETF)を大量に買い入れ、株価を支えています。

 この10年で株価は2倍に上昇し、大企業と富裕層に恩恵をもたらしました。その一方、実質賃金は年収にして20万円も減り、格差が拡大しました。

 株価が下がれば日銀が含み損を抱えることになります。ETFは国債と違って償還がありません。売却すれば株価を下げ、市場を混乱させかねません。

 植田総裁がどういう姿勢で政策を検証するかが問題です。金融政策決定会合後の記者会見では「目先の政策変更に結び付けてやるわけではない」と述べています。2%の物価上昇を目標に「粘り強く金融緩和を続けたい」と言います。検証には「1~1年半」かかるとしています。

中央銀行の使命を果たせ

 3%を超える物価上昇が7カ月続いています。食料品は7%を超える上昇です。電気・ガス代は、政府の軽減策で一時的に上昇が抑えられていますが、2桁の上昇率が続きました。

 日銀は、物価が国民のきょうあすの暮らしの問題であることを考えるべきです。「物価の安定」という本来の使命を果たすため、早急に転換の方向を打ち出すことが求められています。

 異次元緩和は安倍晋三政権が日銀に実行させた政策です。それ以来、金融緩和に依存した政策が続いています。金融頼みをやめ、賃上げを軸に、実体経済を活発にするのは政府の責任です。


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