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2023年4月24日(月)

辺野古裁判シンポ 各氏の発言

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(写真)登壇者の発言に拍手を送るシンポジウム参加者=22日、那覇市

 沖縄県が名護市辺野古の米軍新基地建設断念を求め国と争っている裁判をめぐり、22日に那覇市で開かれたシンポジウム「辺野古裁判と誇りある沖縄の自治―裁判の今とこれから―」(辺野古訴訟支援研究会主催、オール沖縄会議共催)での登壇者の発言要旨を紹介します。



ひっくり返す展望あり

弁護士 加藤裕氏

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(写真)弁護士 加藤裕氏

 いま継続している裁判はどういう裁判か。玉城デニー知事が設計変更の不承認処分をしたことで国は大浦湾の工事ができず、このままだと辺野古の基地は100%できない。この不承認をひっくり返して承認処分をさせ、工事を進めるというのが国の対抗手段です。

 そのために事業者の防衛省沖縄防衛局は行政不服審査請求をし、国土交通相がデニー知事の不承認処分を取り消す裁決をしました。さらに、公有水面埋立法(辺野古埋め立ての根拠法)を所管する国交相がデニー知事に承認処分をせよと是正指示を行いました。

 この二つの国の介入行為は違法な関与だとして、県はその取り消しを求めて裁判を起こしているのです。

 争点の一つは、行政から不当な処分を受けた国民の権利や利益の救済を図るのが行政不服審査制度で、国の機関である防衛局は本来、審査請求できる資格がないのですが、「私人」になりすまして請求し、デニー知事の処分をひっくり返す行政処分を受けた問題です。

 公有水面の埋め立てについて、(都道府県知事と違って)国にさまざまな「特権」がある。ですから本来、特権を持つ国は審査請求できる知事と同じ立場にはないはずです。

 しかし、県の埋め立て承認処分の撤回を取り消したのは、違法な国の関与だとして県が訴えた裁判で最高裁は2020年、国が特権を得るのは埋め立て承認の処分の後のことだから、承認処分を受ける段階では、国も(私人と)同じ立場という理屈で、審査請求できると判断しました。

 一方、今回の裁判は埋め立て承認を受けた後に設計変更しようとする段階なので、国は特権的な立場にもう入ってしまっているわけです。最高裁が20年に県を負けさせた理屈は逆に今回、県を勝たせる理屈になるというのが論理の帰結ではないか。3月16日の高裁判決はこの違いを軽んじ、非常に無理のある議論をしました。

 これらの点をただし、裁判官に論理的に響かせれば、最高裁で県がひっくり返せる展望はある。そう信じて上告受理申立理由書を書いたわけです。

“私人なりすまし”悪質

名古屋大学名誉教授 紙野健二氏

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(写真)名古屋大学名誉教授 紙野健二氏

 辺野古問題を考える時、2000年前後の地方分権改革の理念は一体どこに行ったのかという疑問を私たちは忘れるわけにはいきません。同じことは行政不服審査制度の改革についても言えます。

 “私人なりすまし”のやり方は、審査制度の悪用以上のものです。さらに変更承認の場合は、これを地方自治法の上にねじこんでくるというとんでもないことをやっている。

 沖縄の自治は何度も住民の意思として表明されてきました。その認識がこれまでの辺野古裁判の判例では全くと言っていいほど欠けている。先日の高裁判断は、承認問題と変更承認の違いをきちんと理解していない。最高裁は事実を見て高裁の誤りを正せという要求が必要だと思います。

国の耐震設計はずさん

新潟大学名誉教授 立石雅昭氏

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(写真)新潟大学名誉教授 立石雅昭氏

 国の設計変更申請の耐震設計があまりにもずさんです。護岸の部分は小さな地震でも崩落する可能性があります。その話が判決の中にない。重要構造物を造る際に想定外は許されないと世論を盛り上げねばなりません。

 沖縄県の調査で辺野古周辺は震度6弱程度で揺れると推定されています。防衛省はこれを無視して地震動を40ガル(震度4程度)と見積もり、極めて低い耐震設計をしています。ちょっとした地震ではもちません。

 軟弱地盤で、70メートルより深い部分は地盤改良もしないでなんとかなるだろうというのが今回の設計計画です。

 国民の命と財産に関わることにおいて、安全であるのかどうか、きっちり争わなければいけません。

住民が直接被害受ける

辺野古住民訴訟原告側代理人・弁護士 川津知大氏

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(写真)辺野古住民訴訟原告側代理人・弁護士 川津知大氏

 辺野古の米軍基地が完成すれば周辺住民は環境を享受する権利が埋め立てにより侵害され、米軍機の騒音や落下物の危険などで安全に過ごす権利が侵害されます。住民らが原告になり、知事の埋め立て承認撤回と設計変更申請不承認を取り消した国による裁決の取り消しを求める二つの抗告訴訟をしています。

 撤回に関する抗告訴訟で那覇地裁は、執行停止手続きの中では原告4名に裁判に訴える資格「原告適格」を認めていました。しかし、裁判長が交代して、判決でこの4名も原告適格を認めずに却下し、いま控訴中です。

 周辺住民が直接被害を受けることは明らかです。裁判官がしっかり判断すれば原告適格は当然認められますし、十分勝てる裁判です。

制度のおかしさ考えて

早稲田大学教授 岡田正則氏

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(写真)早稲田大学教授 岡田正則氏(オンライン参加)

 防衛省沖縄防衛局が審査請求を行い、国土交通相が沖縄県による設計変更申請不承認処分を取り消した裁決については、国の機関が国の機関に助けを求めるわけですから、沖縄防衛局は審査請求という救済の仕組みは使えないはずです。これが裁判であれば裁判官が原告と利害関係人になるということになりますから、国土交通相は裁判官としての資格がない立場となるにもかかわらず、裁判官と同じようなことをやっている。

 逆に国と沖縄県の関係になると、知事が国土交通相の裁決はおかしいと訴えることはできないと位置づけられてしまう。最高裁の審理では、こういう仕組みのおかしさをきちんと考えていただきたい。

地方自治を踏みにじる

沖縄県知事 玉城デニー氏

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(写真)沖縄県知事 玉城デニー氏

 いかに不条理に満ちた工事であるか、自治の権限を踏みにじる高裁の判断であるか。翁長雄志前知事の当選、私の当選、民主主義の正当な手続きを経て得られた辺野古(新基地)反対という民意。設計変更不承認処分の際の県民や専門家集団の多くの意見。これらをもとに最高裁は、この国の司法のあり方と地方自治の尊厳について、しっかりと判断をしていただきたい。

 辺野古のゲート前や県内各地、全国で文字通り身を削って活動していただいている方々に最大の敬意と感謝を持ちつつ、より多くの方々にいかにこの裁判は勝たねばならないのかということを伝えていただきたい。私も不退転の決意で辺野古不承認に断固として取り組んでいきます。

 事実を、正義を、民主主義を伝えていかなくてはなりません。この国の将来を、沖縄の将来を正しいものにしていくために、これからも一緒に頑張っていきましょう。勝つことは諦めないことです。


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