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2023年4月9日(日)

主張

「同志国」軍の支援

分断と対立広げる危険な方針

 岸田文雄政権が「同志国」とみなした途上国の軍を無償で資金協力する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の実施方針を決めました。昨年12月に閣議決定された安保3文書の一つ、国家安全保障戦略を途上国援助の分野で実行するものです。これまで政府開発援助(ODA)の対象外としてきた他国への軍事援助に公然と踏み出します。ODAの原則を示した開発協力大綱も国家安全保障戦略に沿って改定します。中国を念頭に、対立と分断を広げる危険な動きです。

途上国援助を中国包囲に

 国家安全保障戦略は、事実上の中国包囲網である「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を実現するため「同志国」の軍に装備品や物資を提供し、インフラを整備する新たな協力枠組みをODAとは別に設けるとしました。

 この戦略を受けたOSAの実施方針は5日、国家安全保障会議の閣僚会合で決められました。すでに2023年度予算に20億円が計上され、フィリピン、マレーシア、バングラデシュ、フィジーが対象に挙がっています。警戒監視レーダーや警備艇の供与が検討されているといわれます。

 フィリピン、マレーシアは南シナ海で領有権をめぐって中国と対立しています。国際紛争の当事国への軍事援助は緊張を激化させかねません。

 政府は、OSAは「防衛装備移転三原則」の枠内で行うとしています。安倍晋三政権が14年4月、それまで武器輸出を原則禁止していた武器輸出三原則をほごにし、解禁したのが移転三原則です。歯止めになりません。

 OSA実施方針と同時に決定された開発協力大綱の改定案には、国家安全保障戦略を踏まえて開発協力を「一層効果的・戦略的に活用する」と明記されました。ここでもFOIPの実現が目標とされています。

 以前の指針だったODA大綱は「軍事的用途および国際紛争助長への使用の回避」を掲げました。安倍政権は16年に閣議決定した開発協力大綱でこの文言を残しつつ、援助に軍が関係しても「実質的意義に着目し、個別具体的に検討する」と非軍事の原則と相いれない項目を盛り込みました。

 安倍政権がODAのあり方をゆがめた上で、岸田政権は途上国援助を中国排除の戦略に使う姿勢をあからさまにしています。大軍拡と一体の動きです。

 憲法前文は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」を明記しています。途上国援助はこの理念に沿ったものであるべきです。9条で戦争を放棄したことからしても軍事援助は許されません。

自主的発展への貢献こそ

 世界ではなお7億人が貧困基準以下の生活を送っています。日本の途上国援助は重要です。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は日米、中国も参加する東アジアサミット(EAS)を地域の枠組みとして発展させ、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望する、ASEANインド太平洋構想(AOIP)を提唱しています。岸田首相もAOIP支持を表明しています。そうであるならば世界の平和と、途上国の自主的・自律的発展に貢献する援助こそ増やさなければなりません。


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