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2023年3月20日(月)

主張

フリーランス保護

違法・脱法許さない規制強化を

 フリーランスで働く人は推計462万人です。スマートフォンのアプリなどを介した単発・短期の労働(ギグワーク)が普及し、副業として働く人も増加傾向です。フリーランスは独立した個人事業主として取引先や仲介業者と対等な立場とされつつ、多くの場合、法的保護が脆弱(ぜいじゃく)なもとで複合的な不利益を被っています。実態は労働者であるのに、使用者が雇用責任を逃れて「名ばかり事業主」扱いする違法・脱法行為が長年横行していることも深刻です。

無権利状態拡大させない

 2012年の安倍晋三政権復活以降、財界と政府は「多様な働き方」の促進を名目に、フリーランスなど雇用契約によらない働き方の拡大を重要政策に位置付けました。それに対し当事者や労働組合が実態を告発し、無権利状態の放置は許さないと声を上げてきました。国会では20年、日本共産党の笠井亮衆院議員が「権利ゼロの働き方が広がっていいのか」と追及し、安倍首相は「決していいとは思っていない」と答弁しました。

 21年に「フリーランス・ガイドライン」が策定され、独占禁止法や下請法、労働関係法令に照らした基準が示されました。しかし、厚生労働省委託の「フリーランス・トラブル110番」には2年間で、報酬の未払いや遅延など1万件超の相談が寄せられ、対策強化の必要性を浮き彫りにしています。現行法のもとでも可能な保護を直ちに適用し、違法行為の規制を強めることが急務です。

 岸田文雄政権は今国会に、フリーランスが関わる取引の適正化と就業環境の整備を図る法案を提出しました。法案は取引事業者に契約書面等の交付を義務づけ、報酬の支払期日を納品等から60日以内に定めます。一定期間以上の継続的な契約での一方的なキャンセルや減額などを禁止し、契約の中途解除や不更新の場合は30日前までの事前予告を設けます。政府の調査では契約書の不交付や内容が不明瞭のケースが6割、未払いや一方的な減額、遅延を経験した人が3割でした。これらを防止・是正する最低限必要なルールです。

 法案は就業環境整備に関して事業者に、フリーランスのハラスメント被害の防止措置と、妊娠・出産・育児・介護との両立に関する配慮義務を課します。違法行為是正のため、関係省庁が調査や助言、指導、勧告、公表、命令を行い、従わない場合の罰則もあります。

 これらは一歩前進です。国会審議で一層の改善・拡充が求められます。取引適正化だけではなく、雇用・労災保険への加入拡大や社会保険料軽減、保育環境拡充も政治の責任で進めるべきです。

 多くの分野で報酬が長年低く抑えられ、コロナと物価高が追い打ちをかけています。収入減を招くインボイスの中止は不可欠です。

すべての働き手を守ろう

 国際労働機関(ILO)の「雇用関係に関する勧告」は契約の形式にかかわらず、雇用関係の実態があると推定できれば労働法が適用できるよう提起しています。欧州委員会が21年、スマホのアプリなどを介した労働の条件改善に関する指令案を発表するなど、各国で保護の流れは広がっています。

 日本でも従来の狭い労働者性の判断基準を改めるとともに、当事者の要求を踏まえた保護と社会的条件の確立へ踏み出すべきです。


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