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2023年3月16日(木)

主張

官邸圧力と放送法

報道の自由侵す解釈撤回せよ

 放送法の「政治的公平」の解釈をめぐる安倍晋三政権内のやりとりを記した総務省の行政文書は、官邸からの執拗(しつよう)な圧力で放送の自由を侵害する解釈変更が行われたことを浮き彫りにしています。しかし、岸田文雄政権は官邸の圧力があったことを認めず、詳細な経過を明らかにすることにも否定的です。当時の総務相だった高市早苗・経済安全保障担当相は、文書を「捏造(ねつぞう)」と決めつける発言までして批判を浴びました。真相にふたをすることは許されません。解釈変更による放送への影響は今も続きます。解釈変更を撤回させることが不可欠です。

反省のない岸田政権

 政府は、放送法4条にある「政治的公平」について1960年代から、一つの番組だけで判断するのではなく、放送事業者が放送する番組全体を見て判断するとしてきました。ところが、2015年5月の参院総務委員会で高市総務相は「一つの番組のみ」でも判断できるという新解釈を示しました。16年2月には、電波の停止もあり得るとも国会で表明しました。その後、新解釈に基づく政府統一見解がまとめられました。

 総務省が存在を認めた78ページにわたる行政文書には14年11月~15年5月にかけて、放送法の解釈変更に至る舞台裏が具体的に記録されていました。官邸側の礒崎陽輔首相補佐官が総務省担当者らに説明を求め、「一つの番組でも明らかにおかしい場合がある」「けしからん番組は取り締まる」などと発言したことが随所に記述されています。

 やりとりの中で、難色を示す総務省が解釈変更に傾き、自民党の参院議員が総務委員会で質問し、高市氏が解釈を変更する答弁につながる経過が行政文書から浮かび上がります。

 安倍氏から「今までの放送法の解釈がおかしい」旨の発言があったこと、同氏が「総務委員会で答弁しておいた方が良いのではないか」という反応を示したことが書かれた文書もあります。

 岸田首相らは、礒崎氏が放送行政担当の首相補佐官でないことなどを理由に、解釈変更は総務省の判断だったと主張しますが、説得力はありません。高市氏は「捏造」という表現は避けつつ、文書は正確な記述でないと言い張ります。しかし、高市氏の15年の答弁は、行政文書で書かれた内容をほぼ踏襲しています。同氏には詳しい経過を説明する責任があります。

 礒崎氏は問題発覚後、ツイッターなどで総務省と意見交換をした事実を認めています。同氏の国会招致は欠かせません。

今につながる重大問題

 共同通信の世論調査(11~13日実施)では、解釈変更を求めた行為は「報道の自由」への介入とした回答が65・2%、高市氏の「捏造」発言に「納得できない」が73・0%にのぼりました。

 15年の解釈変更は当時、問題視された一方、放送の現場では萎縮が顕著になり、政権に批判的なキャスターの降板などが続きました。安倍政権が推進した安保法制や改憲の動きと放送への介入が一体不可分だったとの指摘が相次いでいます。岸田首相の大軍拡を正面から検証する放送も見当たりません。放送法の解釈変更がもたらしている深刻な事態です。解釈変更の撤回は今日の課題です。


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