しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年3月9日(木)

取材相手の国会秘書が性暴力

女性元記者が国賠提訴

職務権限利用「理不尽です」

 国会議員の公設秘書から取材機会を利用して性暴力を受けたとして、報道機関に所属する元記者の女性が8日、国に対し1100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。


写真

(写真)原告コメントを読み上げる弁護団。左から長谷川悠美、青龍美和子、中野麻美、角田由紀子各弁護士=8日、東京都内

 訴状によると、2020年3月、政治状況を取材していた女性記者に対し、衆院議員、埼玉県知事などを歴任した上田清司参院議員(埼玉選挙区)の公設秘書の男性が、情報提供をするとして記者を呼び出し飲酒させ、性暴力におよびました。

 女性記者は数日前にも同秘書からタクシー車内などでわいせつ行為を受けており、合わせて埼玉県警に被害届を提出しました。県警は「悪質」な犯罪として被害届を受理していたものの、同6月には「逮捕できない」と女性記者に報告。同8月、起訴相当として公設秘書を準強制性交容疑などで書類送検しましたが、その数日後に公設秘書が自死したことから、不起訴処分となりました。

 女性側は、国会議員や公設秘書が、記者に国政や政策にかかわる情報を提供するのは公務員としての職務の一つであり、今回の性暴力は職務権限を利用して振るった不法行為だと指摘。また国会議員には公設秘書を指揮監督する責任があるとし、「記者に対する性暴力を防止すべき注意義務を怠った」と訴えています。

 原告の女性は弁護団を通じて、提訴に踏み切った理由を「加害者に対する怒りもありますが、それ以上に、埼玉県で権力のある人が性に関する罪を犯しても加害者が守られ、被害者として理不尽に多々感じられることがあったから」とし、別の政治家からも「よくある話なのに、なぜ被害届を出したのか理解できない」などの心無い言葉を言われたと指摘。事件を公にすることで「同じ思いをする人が少しでも少なくなれば」としました。

 弁護団の中野麻美弁護士は、「女性記者の取材の自由や報道の自由がどれだけ尊重されているのか。それが、社会の中で民主主義や人権を徹底していくことに必要な情報を、社会に届けていけるかにかかわってくる」と強調。政治家などの取材対象者は記者に対し優位に立ちやすく、情報提供を条件に性的暴行やセクハラに及ぶという構造が存在すると指摘し、「そういうリスクがない社会が本当に民主主義と人権を保障していく社会だと思う」と話しました。


pageup