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2023年3月6日(月)

主張

日銀の新総裁人事

国民苦しめる政策を転換せよ

 国会の同意を必要とする日本銀行次期総裁らの人事が近く採決されます。4月8日に任期が満了する黒田東彦(はるひこ)総裁の後任に、岸田文雄政権は植田和男・共立女子大学教授を提案しています。採決を前に、衆参それぞれの議院運営委員会で行われた所信聴取で植田氏は、黒田総裁のもとで続けられてきた「異次元の金融緩和」を引き継ぐことを明言しました。円安・物価高をはじめ、さまざまな害悪をもたらした金融政策をこれ以上続けることは国民を苦しめるだけです。

異次元緩和の破綻明らか

 異次元緩和は、2012年12月に政権復帰した安倍晋三元首相のもとで開始されました。年2%の物価上昇実現を目標に、過去に例がないほど大規模な金融緩和を続ければ、経済の好循環が生まれ、賃金も上がるという触れ込みでした。

 異例の政策に抵抗を示した当時の白川方明(まさあき)総裁に安倍政権は圧力をかけ、日銀に政府と共同声明を結ばせて2%物価上昇の早期実現を目標に据えました。白川氏は任期満了前に退任し、13年3月に黒田総裁が就任しました。

 10年たちますが、好循環どころか、41年ぶりの大幅な物価上昇で暮らしはさらに厳しくなっています。金融頼みの政策で経済を回復させられないことははっきりしています。

 大規模な金融緩和のために外国為替市場で円相場が下がり、輸入物価を押し上げています。電気、ガスなどエネルギー価格の高騰は特に深刻です。国際的な物価急騰やロシアのウクライナ侵略のさなかに、円安を加速させた政府・日銀の責任は重大です。

 植田氏は所信の中で「2%の物価安定目標を持続的、安定的に実現するため、政府と緊密な連携を図りながら、必要な政策を責任を持って実行していく」と異次元緩和の継続を主張しました。

 異次元緩和が賃上げや経済成長につながらなかったことについて「効果が発現するまでには、ある程度の時間がかかる」として「現在、日本銀行が行っている金融政策は適切であると考える」との立場です。政府・日銀共同声明についても「直ちに見直す必要があるとは思わない」と述べました。

 日銀は大企業の株式で構成する投資信託を大量に購入し、株価をつりあげました。中央銀行が株式市場に巨額のマネーを投入して相場を操ることは、他のどの主要国も行っていません。植田氏は「市場の不安心理が経済に及ぶのを防ぐ」ためだと、この政策を正当化しました。

本来の使命に戻ってこそ

 異次元緩和のために大量の国債を買い込んだ結果、日銀が保有する国債は580兆円を超えました。国の借金の半分以上を日銀が引き受ける異常事態です。通貨、財政に対する信認が失われれば、インフレや財政負担でつけを払わせられるのは国民です。植田氏は「財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)のためにやっているものではない」と、黒田総裁と同じ言葉を繰り返すだけでした。

 日銀に求められているのは日銀法が定めた「物価の安定」という本来の使命に立ち戻ることです。破綻した異次元緩和を総括し、暮らしと経済の向上に資する金融政策に転換しなければなりません。


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