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2023年3月5日(日)

主張

放送法の解釈変更

政権内のやりとり真相解明を

 放送法の「政治的公平」の解釈変更を巡る安倍晋三政権内のやりとりを記述したとされる文書を、立憲民主党の小西洋之参院議員が公表しました。総務省職員から提供されたとされる文書には、官邸幹部が特定の番組を問題視し、同省に法解釈を変えるよう迫る経過が詳しく記されています。事実なら、放送事業者の自律性や、報道の自由に関わる重大な問題です。安倍政権下では政府・与党が番組に圧力をかけるケースが顕著でした。松本剛明総務相は文書を精査すると述べました。岸田文雄政権は真相を明らかにすべきです。

政治的圧力の可能性濃厚

 放送法4条は「政治的に公平であること」などと定めています。公平については一つ一つの番組でなく、放送事業者の番組全体を見て判断するというのが長年の政府解釈でした。ところが2015年5月の国会で、当時の高市早苗総務相は、一つの番組でも判断できると新しい解釈を示しました。同氏は16年2月の国会で、放送局が政治的公平を欠く放送を繰り返した場合は電波停止を命じる可能性に言及し、批判を浴びました。

 今回明らかになった文書では14年11月~15年5月にかけて、当時の礒崎陽輔首相補佐官(元自民党参院議員)が総務省に新しい解釈をするように強く求めた状況が時系列で具体的に記されています。

 文書によれば、同氏はTBS系番組「サンデーモーニング」でコメンテーターが全員同じ主張をしていたことなどを挙げ、一つの番組でも明らかにおかしい場面があると総務省に検討を指示していました。従来の法解釈を変えることに難色を示す総務省を、礒崎氏が厳しく批判した様子も書かれています。安倍氏が「現在の放送番組にはおかしいものもあり、現状は正すべき」だと述べたこと、同氏が高市氏との電話で「今までの放送法の解釈がおかしい」旨を発言したことも記されていました。

 文書からは、安倍氏や当時の官邸幹部が、政権の意に沿わない報道や番組に執拗(しつよう)に圧力をかけようとする姿が浮かびます。

 礒崎氏は3日のツイッターで、「補佐官在任中に、放送法で定める政治的公平性について、総務省と意見交換をしたのは事実」と書き込みました。一方、現在、経済安全保障担当相の高市氏は3日の参院予算委員会で「全くの捏造(ねつぞう)文書」と全面否定し、小西議員に「捏造でなければ、閣僚と議員を辞職することでいいか」と問われると「結構です」と答えました。

 岸田首相は、「正確性や正当性が定かでない文書について私から申し上げることはない」(3日)と答弁し、解明に動きません。時の政権が報道や放送内容に介入することは、国民の知る権利に直結する深刻な問題です。政府は責任を持って文書を確認するとともに、高市氏や礒崎氏をはじめ関係者の調査を行うことが必要です。

首相の責任で調査せよ

 戦前の日本では、ラジオが統制され、政府の都合のいい放送が繰り返されました。戦後の放送法は、国民を戦争に動員した痛苦の反省に立ち、言論・報道・表現の自由を保障する憲法21条に基づいて制定されました。

 大軍拡を進める岸田政権の下で「新しい戦前」の危険が指摘される中で、放送への権力の介入を許さない取り組みが不可欠です。


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