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2023年3月4日(土)

トルコ地震1カ月 違法建築 何度も警告

建築家会議所イスタンブール支部 アウパー・ウンルー氏に聞く

残酷な資本主義変えたい

 2月6日に発生したトルコ・シリア大地震からまもなく1カ月となります。トルコでは16万棟以上の建物が全半壊し、4万4000人以上が亡くなりました。被害が拡大した理由の一つに違法建築の横行が指摘されており、政府の責任を問う声も出ています。全国の建築士約8万5000人が加盟する建築家会議所イスタンブール支部のアウパー・ウンルー副代表に建築現場にどんな問題があったのか、被災地再建にどんな姿勢が求められるか聞きました。(イスタンブール=秋山豊)


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(写真)アウパー・ウンルーさん(秋山豊撮影)

 被災者の苦しみを思うと悲しくてたまりません。私たちの仕事は建物をつくることだからです。私たちの組織は、建築家の権利保護と、社会における健全な住環境の確保を掲げて活動しています。

建物の検査不十分

 1999年に北西部でイズミット地震(死者1万7000人以上)が起きました。この地震以降、建築規制が改定されてきましたが、適切な検査が行われていない状態が続いています。

 とくに地方自治体には適切な技師がいません。建物をたてる際には、地盤に合った基礎をつくる必要がありますが、その検査も不十分です。

 99年以降、建築規制が改定されてきた一方で、建設業界は、莫大(ばくだい)な利益を追求してきました。建築期間を短縮し、安上がりな方式で建物をつくり、不動産をたくさん売却し、規制の抜け穴を使って利潤を得ることばかりが求められました。

 コンクリートの品質を下げる不正も行われています。柱に使う鉄筋の数を少なくしている場合もあります。建物の所有者が違法に増改築しても「恩赦」を受けられる仕組みさえあります。

 私たちは違法建築や検査の欠如に何度も警告を発し、政府と対立してきました。安全に暮らせる住まいの確保は基本的な人権です。

利潤を得る手段に

 トルコ政府が建設業による経済発展を重視してきたもとで、多くの違法建築が行われました。建設は利潤を得る手段としか見られていないようです。

 私は人間をないがしろにする野蛮で残酷な資本主義を変える必要があると考えます。私たちの警告を無視し続ける財界とたたかっていく決意です。

 技師の熟練度を上げることや、地震や自然科学、物理学の教育を充実させることも大切です。

 トルコ政府は1年以内に住宅を再建すると述べていますが、違法建築をせずに被災した都市を再生するには時間が必要です。

 被災地では、イスラム教やキリスト教、ユダヤ教などの宗教や多様な文化が混在するなかで、人びとは共に生きてきました。歴史的な建物もあれば、食料品店や飲食店などもあったのです。

 被災者にとって、どんなデザインやスタイルの建物が必要か。建物の適切な面積や高さはどんなものか。議論と準備を十分にしてほしいと思っています。


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