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2023年2月26日(日)

主張

「子ども予算倍増」

相次ぐ無責任発言に不信募る

 岸田文雄政権が打ち出した「子ども予算倍増」について、木原誠二官房副長官が「子どもが増えれば実現できる」などと述べ、批判を浴びています。予算倍増とは、安心して出産・子育てできる社会を実現するために政府がとるべき手段のはずです。木原氏の発言は、子どもが増えれば予算が増額になるという結果を語っただけであり、本末が転倒しています。結局、まともに取り組まず、成り行き任せにするのが本音ではないのか。岸田政権の姿勢に国民の不信は募る一方です。

首相答弁もすぐ修正され

 木原氏の発言は21日放送されたテレビ番組の中でのものです。「子ども予算は子どもが増えれば、それに応じて増えていくことになる」「もしV字回復して出生率が本当に上がってくれば、割と早いタイミングで倍増が実現される」などと話しました。子ども予算を倍増する期限を区切っていないことも強調しました。

 この発言には、政府が若者や子育て世代を積極的に応援し、出産・育児の環境を急いで整備していこうという立場がありません。2022年の出生数が統計開始以来初めて80万人を割り込むことが見込まれる深刻な状況への危機感もうかがえません。それどころか、子ども予算の倍増が必要というなら出生率を上げろと国民に迫ることに等しい発想です。

 松野博一官房長官は24日、「発言全体としては、政府の説明と齟齬(そご)があるとは考えてない」と木原氏を擁護しました。岸田政権が掲げる「次元の異なる少子化対策」の内実が根本から問われる事態となっています。

 そもそも首相が打ち出した倍増の根拠がはっきりしません。15日の衆院予算委員会で首相は「家族関係社会支出は20年度でGDP(国内総生産)比2%を実現している。それをさらに倍増しようではないかと申し上げている」と述べました。家族関係社会支出を基準に2倍化すると初めて表明した答弁に注目が集まりました。ところが16日、磯崎仁彦官房副長官が基準への言及ではないと修正しました。首相も22日の衆院予算委で「倍増の意味が何かは、内容をまず具体化、整理した上で財源を考える」とごまかし、15日の答弁を事実上打ち消しました。

 倍増の基準は、政策・予算の基本にかかわる問題です。それをめぐる首相答弁がすぐに覆されては、議論は成り立ちません。家族関係社会支出は経済協力開発機構(OECD)の基準によるもので、20年度で日本は約10兆7500億円(GDP比2・01%)です。ここには地方負担も含みます。一方、首相は4月に発足する「こども家庭庁」の23年度予算案(約4兆8000億円)を基準にする可能性も示唆しています。拡充させる政策の中身の具体化を置き去りにし、「倍増」の言葉だけ先行させる無責任さが混乱を招いています。

教育無償化の実現は切実

 若者世代が最も切実に願う教育の無償化を、子ども・子育て支援の柱に据えるべきです。衆院予算委の公聴会(16日)でも、子育て支援に詳しい専門家は、教育費の負担軽減が重要な対策だと意見を述べました。岸田政権は直ちに具体化すべきです。同時に教育・子育て予算の圧迫・削減につながる大軍拡の中止が不可欠です。


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