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2023年2月21日(火)

主張

生活保護減額違法

国は反省し支給水準を上げよ

 2013年に安倍晋三政権が決定した生活保護基準の引き下げを違法とし、取り消しを命じる判決が10日、宮崎地裁で出されました。当時の厚生労働相の判断は、裁量権の範囲を逸脱・乱用したものであり、生活保護法に違反すると断じました。

 基準引き下げは生存権を保障した憲法25条に反するとして、29都道府県で約1000人が原告となって違法性を問う裁判をたたかっています。原告側が勝訴したのは、大阪、熊本、東京、横浜に続いて今回で5件目です。岸田文雄政権は判決を受け入れ、基準を引き下げ前の水準に戻すべきです。

原告側の勝訴は5件目に

 安倍政権の生活保護基準引き下げは13~15年にかけて段階的に実施されました。生活保護費のうち、食費や光熱費などにあてる生活扶助の基準を3年間で平均6・5%、最大10%引き下げました。削減された総額は過去最大の約670億円にのぼり、利用世帯の96%に深刻な影響を与えました。

 厚労省は、08年以降の物価下落で利用世帯の可処分所得が相対的・実質的に増加したため、「デフレ調整」のために基準を引き下げたなどと主張しました。

 しかし、宮崎地裁判決は、可処分所得が増えていたかどうか外部の専門家の検討を経ていないことを問題視しました。また08年を物価下落の起点にしたことについても、消費実態が異なっていた可能性もあり「合理的な理由が示されていない」と指摘しました。

 厚労省が物価下落の根拠にした指数の算定方法についても、生活保護利用世帯の可処分所得が影響を受けにくいテレビやパソコンの価格下落が過大に評価されているおそれを挙げ、利用世帯の消費実態を適切に反映していない可能性があると述べました。

 「デフレ調整」の結果、圧倒的多数の利用世帯が減額となりました。判決は「その影響も重大」と強調しました。

 宮崎地裁が「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いている」と「デフレ調整」を違法と結論付けたことは、政府の基準引き下げが、利用者の生活実態を無視した乱暴で恣意(しい)的なやり方だったことを改めて浮き彫りにしています。この判断は原告勝訴の5地裁判決の全てで共通しています。

 政府は、司法判断を真摯(しんし)に受け止め、基準引き下げを根本から反省し、直ちに基準を元に戻す決断をしなければなりません。

 宮崎の訴訟では14年の提訴後に原告1人が亡くなっています。小島清二裁判長は判決言い渡し後、「審理開始から長い期間を要したことで判決を受けることができなかった原告がいることは、一裁判官として遺憾に思っている」と述べました。国がこれ以上、裁判を引き延ばすことは許されません。

暮らしの土台支えてこそ

 生活保護基準は、小中学生の就学援助、保育料減免など国民の暮らしの土台を支える約40の制度の基準にも連動しています。必要なのは急激な物価上昇に見合った保護基準の大幅な引き上げです。

 ところが23年度予算案には、多くの生活保護利用世帯が実質削減になる基準改定が盛り込まれました。あまりに冷たい政治です。切実な願いに背を向ける岸田政権を終わらせるたたかいが急務です。


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