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2023年2月17日(金)

主張

入管法改定再提出

人権侵害への反省がみえない

 岸田文雄政権は、今の通常国会に入管法改定案の再提出を狙っています。出入国管理庁は、改定案の中身について「さまざまな意見や批判を踏まえ検討している」と具体的に説明せず、2021年に廃案となった法案と「同じコンセプト(概念)」になると述べています。入管収容の過酷な実態が明らかになり、入管行政そのものへの批判が高まっています。国際的な人権水準にかなう入管・難民行政を求める国民的運動も広がっています。その中で人権無視と批判を浴びて廃案になった法案を再び持ち出すことは許されません。

2年前は批判を浴び廃案

 廃案になった入管法改定案は、世界でも異常に低い難民認定などの非人道的な入管・難民行政を改めるどころか、外国人の人権侵害をいっそう深刻化させる重大な中身でした。

 3度目の難民認定申請の際は、申請審査中でも強制送還を可能とするなど入管庁の裁量権拡大を盛り込みました。▽母国で迫害の恐れがある▽幼いころから日本で育ち日本語しか話せない―などの理由で帰国できない外国人を「送還忌避者」として罰則を科す不条理極まりない条文もありました。

 国会審議中の同年3月に名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(33)が体調不良を泣いて訴え、外部の病院へ連れて行ってほしいと懇願し、支援者も点滴を求めていたにもかかわらず適切な医療を受けられずに死亡する、痛ましい事件が起きました。その真相は今も解明されていません。

 日本共産党、立憲民主党などは当時、難民認定手続きを公正・透明化し、全件収容主義の撤廃などを柱とした野党案を共同提出しました。病気で治療が必要な人は収容を停止し、収容の要否は入管庁ではなく裁判所がチェックするなど入管による恣意(しい)的な身体拘束を許さない仕組みを盛り込みました。与党も大幅に譲歩し、合意寸前まで協議が進みました。

 再提出する改定案に、そうした議論を反映させるのか否かの説明さえ入管庁は拒んでいます。

 日本の入管行政のゆがみの大本には、入管庁に広範な裁量があり、非正規滞在とされた外国人を全て収容し送還する全件収容主義があります。身体拘束や収容に司法審査がなく、収容期間に上限のない非人間的な扱いが横行していることには世界から国際法違反だと繰り返し指摘されてきました。

 各地の入管収容施設では、体調不良を訴えても医師による適切な診察や根治治療は認められず、単独房での収容が続く中で、死亡事件が相次ぎました。被収容者の生命・身体の安全や健康に向き合うどころか、詐病扱いするなど人権と尊厳を踏みにじる姿勢がたびたび批判されてきました。

無期限・全件収容撤廃を

 ウィシュマさんをめぐる事件の真実を明らかにするためにも、入管行政の根本的な問題解決のためにも、外国人の人権保障の観点にたち、司法審査のない無期限収容や全件収容主義の撤廃など入管行政自体を抜本的に改めなければなりません。運動をさらに広げ、欠陥と問題を抱えたままの改定案の再提出を断念させましょう。

 入管法改正の野党案を柱に、入管行政の抜本的改革に踏み出すべきです。


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