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2023年2月15日(水)

きょうの潮流

 ユネスコの無形文化遺産にも登録された和紙。この伝統技術が、軍事兵器として使われた過去があることはあまり知られていません▼先の大戦末期、陸軍登戸(のぼりと)研究所で和紙をこんにゃくのりで貼り合わせた気球が開発されました。米国本土への攻撃を目的とし、実際に9300発もの「風船爆弾」が飛ばされました。そのうちの千発は北米大陸に届いたとされ、オレゴン州では6人の犠牲者が出ています▼軍事史に詳しい山田朗さんによると、気球は生まれたときから軍事に利用されてきました。18世紀末フランス人に開発された熱気球はフランス革命時に観測や偵察に使われ、日本でも西南戦争の政府軍や日清・日露戦争で使用されてきました▼いま、この気球をめぐって米中の緊張が高まっています。今月4日、米軍はサウスカロライナ州の沖合で中国の気球を撃墜。センサーや電子機器の残骸を回収したと伝えられています。一方、中国外務省の報道官は米国の気球が「去年の1月1日以来、十数回、中国の領空に侵入していた」と発表しました▼ともに偵察用とみなし強硬な姿勢を示しています。米軍の戦闘機は他にもアラスカ州やカナダ上空などで10日以降、3日連続で未確認の飛行物体を撃ち落としています▼偵察衛星に比べ気球はコストが安く、高度が低いので高精度の画像が撮れ、微弱な電波も拾える利点があるといいます。ふわふわと空を舞う物体におびえる大国。互いに冷静に対応し、対立を激化するような行動は慎むべきです。


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