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2023年1月17日(火)

主張

日米の経済安保

中国敵視で軍事優先する危険

 国会や国民に説明なく閣議決定された安保3文書と、それを受けて行われた日米首脳会談は、経済分野でも中国を敵視する米国の戦略に日本を組み込むことを確認しました。「経済安全保障」の名で経済を軍事対軍事の対立に従属させれば、国民の暮らしが犠牲にされかねません。

暮らし圧迫し人権を侵害

 昨年成立した経済安保法の国会審議の際、岸田文雄首相は「特定の国を念頭に置いていない」と答弁していました。今回の日米首脳会談の共同声明は中国を非難し、日米が経済安保でも共同することを明記しました。

 閣僚同士の日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)を通じて経済安全保障、宇宙、原発などに関して日米の「優位性」を確保し、サプライチェーン(供給網)の強化を図るといいます。

 共同声明は、半導体などの重要技術の保護、育成を行うとしています。しかし、世界的な半導体不足を招いている原因はコロナ危機とともに、トランプ前政権時から強まっている米中対立です。主要生産地である台湾や韓国をどちらが取り込むかで米中が競い合ったり、米国が中国企業を制裁するために輸入規制をしたりしたことが大きく響いています。

 半導体は研究開発から製造、出荷まで長い年月を要します。技術の得意分野や供給網はいくつもの国・地域にまたがっていて、一国だけで成立する産業ではありません。対立には一利もありません。

 日米共同声明に盛り込まれた「重要・新興技術の保護および育成」は軍事が中心です。経済安保といっても国民の暮らしは念頭にありません。

 首脳会談に先立って日米防衛相が会談し、兵器供給の安定化を取り決めた文書に署名しました。先端軍事技術の共同開発推進も確認しました。岸田政権の2023年度防衛省予算案で装備技術の研究開発費は前年度の3倍です。日米一体となった軍事技術の開発は軍事費を膨張させ、社会保障などの予算を圧迫します。

 安保3文書の決定や日米首脳会談を受けて、経済安保法が、中国への対抗を目的として運用を本格化することも重大です。

 同法は企業や科学技術に国の介入を強める法律なのに、政省令で定める事項が138もあり、運用が政府に白紙委任されています。「機微技術」を扱う人の個人情報を調査する制度の導入も狙われています。研究者や国民に対する権力の監視が強まり、基本的人権が侵害される恐れがあります。

 通商分野では、米国が主導する「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)推進を盛り込みました。

平和の枠組みが繁栄の道

 日本にとって中国は最大の貿易相手です。両国経済には強い相互依存関係があります。日本が米国と一緒になって中国を排除する枠組みをつくることは日本経済をますます落ち込ませることにしかなりません。中国の覇権主義的行動や経済ルールの不当な侵害には道理をもった批判や国際的な取り決めに基づいて対応すべきです。

 東アジア規模の友好協力条約を展望する東南アジア諸国連合(ASEAN)に協力し、地域のすべての国を含めた平和の枠組みを築くことこそ日本経済が繁栄に向かう道です。


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