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2023年1月11日(水)

主張

農業・農政の焦点

国内増産支える政治に転換を

 国民の命の源となる「食」と、それを生み出す「農」が未曽有の危機に直面しています。食料品価格が軒並み高騰して国民生活を圧迫すると同時に、生産資材の急騰により農業経営の破綻が続出しています。食料の6割以上を海外に依存する日本の危うさがあらわです。食料の本格的な増産に踏み出すことは国民の生存に関わる国政の最重要課題の一つです。

国民の生存基盤が崩壊

 世界は昨年来、長引くコロナ禍にロシアのウクライナ侵略が加わり、「戦後最悪の食料危機」に見舞われています。異常気象による生産の不安定化、新興国での需要の爆発的増大も相まって、一過性の危機ではないと見通されます。

 中国は、世界第2の経済力を背景に食料輸入を飛躍的に増大させており、日本が経済力の低下や異常円安のもとで“買い負け”する事態も生まれています。「食料は金さえ出せばいつでも手に入る」時代ではなくなっています。

 国内農業が、生産資材の大半を海外に依存しており、極めて脆弱(ぜいじゃく)なことも浮き彫りになりました。国際価格の変動に直撃され、肥料・飼料は2年前の1・5倍に高騰し、安定的な確保さえおぼつかない事態です。農産物の販売価格はコロナ禍などで低迷、農業の経営条件は悪化するばかりです。とりわけ酪農は、牛乳を「搾れば搾るほど赤字」という悲惨な状況に追い込まれています。

 日本農業はすでに大きな苦境の中に置かれていました。今回の事態は、懸命に頑張っている中核的な担い手までも営農を断念させ、国内農業の崩壊を加速させ、国民の命の安全を根底から脅かすことになりかねません。

 いま必要なのは、この流れを逆転させることです。なにより急がれるのは、農業経営の危機を打開する抜本的な支援策です。政府の責任で生産コストの急騰に見合う補填(ほてん)を行うことです。

 岸田文雄政権が昨夏以降、いくつかの資材高騰対策を打ち出しましたが、極めて不十分で一時的です。一方で77万トンの米輸入や、生乳換算で13万トンもの乳製品輸入をしながら、米、生乳の減産を農家に押し付けています。農村の強い反発を無視して強行した水田活用交付金の見直しが耕作放棄地を広げ、麦や大豆、ソバなどの生産を縮小させるのは必至です。いずれも食料増産に逆行します。

 岸田政権は「食料の安全保障」を口にし、食料・農業・農村基本法の見直しにも乗り出しています。しかし、そこで検討課題の柱にしているのは食品の輸出拡大やスマート農業の推進などです。国内生産の本格的な増産に結びつくものではありません。危機を招いた根本原因に踏み込む姿勢が欠落していることは重大です。

米国・財界言いなりやめ

 今日の事態は、歴代自民党政府が「食料は安い外国から」との考え方でアメリカや財界の言いなりに輸入自由化を際限なく進め、大多数の農業経営を成り立たなくしてきた結果に他なりません。

 問われているのは、大本からの転換です。「効率」優先でなく人や環境に優しい農政の実現です。価格保障や所得補償で農家が安心して増産に励める農政です。そのために生産者、消費者、加工・流通業者、自治体などが力を合わせ、政治を動かすことが急務です。


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