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2023年1月4日(水)

きょうの潮流

 『文芸春秋』1月号の「続100年後まで読み継ぎたい100冊」に、意外な本が紹介されていました。イジー・ヴォルケル著『製本屋と詩人』(共和国)。1924年に結核のため24歳で亡くなったチェコの革命詩人の、日本初の作品集です▼翻訳した大沼有子さんは作家・松田解子さんの孫です。父は「赤旗」モスクワ特派員も務めた大沼作人さん。60年前、有子さんは父の仕事の都合でプラハで過ごしました▼その後、小学校の教師になった有子さん。30年前、子ども時代を過ごしたプラハが無性に懐かしくなりました。その時、父から渡されたのがヴォルケルの童話集でした。読んで、すっかりほれ込んだといいます▼表題作「製本屋と詩人」は、裕福な詩人が自分の詩集を、病気の妻を抱えた貧しい製本屋に製本させます。すると、喜びの詩は、貧しいものの「悲しみと苦しみが浸(し)み込んで」、まったく別の詩になってしまいました。落胆した詩人は詩作をやめ、詩を台無しにしたとして逮捕された製本屋は、獄中で貧しい人のための詩を書き出します。芸術と人生についての詩情豊かな寓話(ぐうわ)です▼ヴォルケルは裕福な一族の出身でした。ロシア革命の影響と貧富の格差への義憤からチェコスロバキア共産党に入党し、プロレタリア文学運動に身を投じました。彼の詩と童話は、チェコでいまも高校で教えられ、新しい絵本が出版されています▼100年の時を超え、国境を超えて届いた革命詩人の心。同じ志の人の縁がつないだ贈り物です。


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