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2022年12月21日(水)

オランダ謝罪 社会が「負の遺産」向き合う

首相、奴隷・移民子孫と対話

 オランダが栄華を極めた「黄金時代」は、植民地支配や奴隷制を通じた巨額の利益の上に築かれましたが、政府はこれまで奴隷制で国が担った役割についての謝罪を避けてきました。ルッテ首相は19日の演説で「長い間、意味のある責任を簡単に取ることはできないと思っていた。しかし、私は間違っていた」と述べ、謝罪に踏み込みました。

 政府の公式謝罪の根底にあるのは、奴隷制が及ぼした影響を調査する独立委員会が2021年7月に発表した報告書です。国家主導の奴隷制で、人間が商品とされ、搾取・虐待されたと指摘。大西洋奴隷貿易が「人道に対する罪」だと認め、政府が公式に謝罪し、被害を「回復」するよう勧告しました。

 政府が同委員会を設置したのは20年。当時米国で始まった「ブラック・ライブズ・マター」運動をきっかけに、オランダでも旧植民地国や、奴隷や移民にルーツを持つ市民との対話が進みました。

 勧告を受け、ルッテ氏は昨年9月、旧植民地の南米スリナムを訪問。演説では、政府関係者や活動家との交流で「奴隷制の歴史が人々の精神や日常生活に、いかに深く影響を及ぼしたか知った」と語りました。

 ルッテ氏は、今回の発言で「社会的な認識の高まり」に触れました。オランダでは昨年から国内の博物館や美術館が「過去の暗い歴史」を問う展示会を次々に開催。アムステルダムなど主要都市の市長やオランダ中央銀行が奴隷貿易への加担を謝罪しました。

 オランダ王室も6日、植民地時代に王室が担った役割を検証するため、歴史研究者らからなる独立検証委員会に調査を委託すると発表しました。

 社会全体で「負の歴史」に向き合おうとする取り組みが進んできたことが、政府の謝罪を引き出したと言えます。

 首相の演説の場に招かれたのは、スリナムやカリブ海のキュラソー島で奴隷とされた人々の子孫で、オランダ政府の謝罪を求めてたたかってきた活動家らでした。

 「政府が誤りを認めたのは重要な一歩だ。私たちの声が反映されつつある」との声もある一方で、スリナム出身のルディ・ダムスコさんは、奴隷として扱われた人びとの子孫との事前の対話が不十分だったと指摘。「『私の謝罪を受け入れろ』という、かつてと変わらない『上から目線』を感じる」と批判しました。政府に賠償を求める声も上がっており、今後の課題となりそうです。(桑野白馬)


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