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2022年12月13日(火)

主張

学術会議の改革

独立性崩す政府方針 撤回せよ

 岸田文雄政権は6日、「日本学術会議の在り方についての方針」を公表しました。学術会議の会員選考や活動内容への政治介入を強め、独立性を掘り崩すものです。8日の学術会議総会では会員から批判が噴出し、梶田隆章会長は「学術会議のあり方や活動に極めて深刻な影響を及ぼす」と述べました。政府は、方針を具体化し、2023年3月までに関連する法案を国会に提出するとしています。

問題をすり替え政治介入

 20年10月に6人の会員任命を拒否した暴挙に無反省のまま、問題をすり替えて学術会議の変質を強行することは、「学問の自由」を何重にも侵害するものです。方針は撤回すべきです。

 方針は、会員選考に第三者を参画させ、「選考・推薦および内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」としています。これは、学術会議が推薦した会員候補を首相が形式的に任命するという学術会議法の規定を否定し、首相に任命を拒否する権限があるという立場を前提にしています。

 「適正かつ円滑」な任命のルールを覆したのは菅義偉前首相です。学術会議の会員選考過程に問題があるかのように描いて、「第三者の参画」によって会員選考に政治介入する意図が透けて見えます。

 方針は、学術会議の基本的な活動方針や科学的助言について「政府等と問題意識や時間軸等を共有」するよう求めています。学術研究の問題意識や時間軸は性格上多様で、政府のそれに一致するとは限りません。そこに科学者の独自の役割があります。

 学術会議が「政府等の問題意識」に合わせ活動することになれば、人事介入と相まって「学問の自由」が制約され、政府の意に沿う助言機関に変質してしまいます。「科学者の内外に対する代表機関」として「独立して職務を行う」(日本学術会議法)という組織のあり方を根本から変えるものです。

 方針は、「改革」の理由に「高い透明性」の確保を挙げています。しかし、学術会議は21年4月の報告「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」で、選考プロセスの透明性を向上させる取り組みを開始しています。「透明性」というなら学術会議の自主性を尊重し、何よりも政府自らが任命拒否の経過と理由を明らかにしなければなりません。

 岸田政権が方針を打ち出した背景には、「敵基地攻撃能力」保有と5年間で43兆円もの大軍拡を進める「戦争国家づくり」への暴走があります。政府の軍事力強化に関する有識者会議報告書(11月22日)は、最先端の科学技術を最新兵器の開発・利用につなげるために、「政府と大学、民間が一体となって、防衛力の強化にもつながる研究開発を進める」ことを明記しました。その推進にとって、軍事研究を拒否する声明を3回にわたって発信してきた学術会議が障害になっているのです。

「学問の自由」守り抜く

 学術会議発足の原点は、前身である学術研究会議が戦前、御用機関に変質し、多くの研究者が侵略戦争に動員させられた痛苦の歴史の反省に立って、「学問の自由」と学術会議の独立性を保障したことです。日本が戦争か平和かの歴史的岐路にある中で、「学問の自由」を守るたたかいを強める時です。


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