しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年12月7日(水)

主張

生産費高騰の危機

日本から畜産・酪農の灯消すな

 「日本から畜産の灯(ひ)が消えてしまう!」―11月30日、農林水産省前の畜産危機突破中央行動で畜産農家の悲痛な訴えが相次ぎました。この声にこたえ、畜産経営への抜本的な支援策を講ずることは政府の待ったなしの課題です。

倒産・廃業加速する危険

 畜産農家はいま未曽有の危機に直面しています。飼料代が2年前と比べ47%、肥料代が45%、光熱動力費が28%値上がりするなど生産費の急騰の一方で畜産物価格は低迷し、経営は悪化の一途です。

 とりわけ酪農は、牛乳を搾れば搾るほど赤字が増える悲惨な事態です。エサ高に加え、需要減少による乳価の抑制、生産の削減と在庫処理の負担が押し付けられ、副産物収入の雄子牛の価格は暴落するなど何重もの苦難に見舞われています。日本農業新聞の聞き取り調査(5日付)によれば、今年4月末から10月末までに酪農家は約400戸(3・4%)減少しており、年末に資金繰りがつかず、倒産・廃業が加速すると懸念されます。すでに自殺者も出ています。

 飼料など資材の値上がりは異常円安と世界的な価格高騰が原因です。畜産物の需要減少も長引くコロナ禍などが背景です。農家の努力ではとうてい打開できず、解決には政府の役割が不可欠です。

 岸田文雄政権は夏以降、資材高騰対策を打ち出しましたが、部分的・一時的なもので深刻な実態に見合ったものではありません。

 先に成立した補正予算に、農家の直面する苦境を解消する対策はありません。新たに打ち出したのは、乳牛を淘汰(とうた)したら1頭15万円支給するという施策です。一方で乳製品の輸入は続けながら、酪農家には牛乳消費が落ちているので生産を減らせと求めています。

 数年前、バター不足が騒がれ、政府が増産を奨励し、借金して規模拡大を進めた酪農家も少なくありません。アクセルを踏んだところに急ブレーキをかけられたのです。牛乳生産は水道の蛇口をひねるようにはいきません。一度減らすと回復に数年かかります。乳製品の「過剰」分は国の責任で買い上げ、生活困窮者等に回すべきです。岸田政権の対応では酪農家の倒産に拍車をかけ、国産牛乳が不足する事態を招くのは必至です。

 日本の畜産・酪農は農業生産額の36%を占め、国民に安全・安心の牛乳・畜産物を供給する大事な産業です。農家だけでなく飼料の製造や流通、畜産物の加工・運搬など関連産業も広く、雇用や地域経済でも大きな役割を果たしています。断じてこの灯を消すわけにはいきません。

 今回の危機は、飼料を外国に依存し、大規模化を推進してきた歴代自民党政府の畜産政策のあり方にも根本的転換を迫っています。必要なのは、人と環境に優しい持続可能な畜産をめざす方向です。その展望を開く第一歩としても、現在の畜産経営の危機を打開する思い切った支援が不可欠です。

価格高騰分に直接補填を

 日本共産党は11月、資材高騰などに対する支援を抜本的に強化し、飼料や肥料の価格高騰分を農家に直接補填(ほてん)する緊急対策を政府に求めました。価格保障や所得補償を抜本的に充実し、自給率向上をめざすことも提言しました。畜産農家や、新鮮で安全な畜産物を求める国民と手を取り合い、危機の打開のために力をつくします。


pageup