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2022年12月6日(火)

家族労賃 経費と認めて

所得税法56条廃止・見直し 563議会が意見書

全婦協調べ 草の根運動から広がる

写真

(写真)意見書可決を喜ぶ奈良県婦協の岡智子会長(左から2人目)と葛城市議会の川村優子議長(中央)、吉村始副議長(右端)ら(奈良県婦協提供)

 商店や農家などの自営業に欠かせない家族従業者の「働き分」(自家労賃)を必要経費だと認めない所得税法56条の廃止や見直しを求める意見書可決(趣旨採択を含む)が563地方議会に広がり、全自治体の3割を超えていることが、全国商工団体連合会婦人部協議会(全婦協)の調べで5日までにわかりました。

 各地の民主商工会婦人部が議会請願にねばり強く取り組んできた成果です。

 全婦協は創立以来、明治時代の家父長制的「世帯課税」を引き継いだ所得税法56条は日本のジェンダー差別の根幹にかかわる問題だとして廃止を求めてきました。

人権問題として

 意見書を可決したのは宮城、三重、富山、石川、奈良、香川、徳島、高知、大分、宮崎、沖縄の11県と、198市280町74村(可決後に市町村合併で消失した町村を含む)です。

 北海道では5割を超す100議会に到達。長野県では6割を超す48議会が可決しています。高知県では2019年7月までに、県議会をはじめ34市町村議会すべてで達成しました。

 奈良県葛城市議会は9月22日、全会一致で意見書を可決。本会議に先立つ総務建設常任委員会では、「廃止」か「見直し」かで意見が割れましたが、吉村始副議長が「同じ労働に対して、青色と白色の申告の違いで差をつけるのはおかしい。『廃止』の意見書でいきましょう」と説得しました。

 葛城市議会の意見書は「国連からの勧告、政府の見解などから、人権問題として、差別的税制をこれ以上放置せず、家族従業者の労働の社会的評価、働き分を正当に認めるため、所得税法第56条を廃止することを求めます」としています。

後継者育成妨げ

 所得税法56条は、個人事業主が生計を一にする親族に対して労賃を支払ったとしても経費として認めないことを規定しています。白色申告の場合、事業主の所得から配偶者で年間86万円、配偶者以外の家族で年間50万円が控除されるのみで、時給に換算すると最低賃金にも及びません。

 このため、自営業者の配偶者や家族は社会的にも経済的にも自立しにくく、社会保障や行政手続きなどで不利益を受けています。後継者育成にも大きな妨げとなってきました。

 青色申告にすれば自家労賃を必要経費にできますが、税務署長に届け出て、認められなければなりません。申告の仕方によって、働いている事実を認めたり、認めなかったりすることは、納税者を差別することになります。

 09年、国連女性差別撤廃委員会は所得税法56条の検討を行い、「女性の経済的自立を妨げている」と懸念を表明。16年には「所得税法の見直し」を日本政府に勧告しました。世界の主要国は、家族従業者の働き分を必要経費と認めています。

 各地の税理士団体や日本弁護士連合会なども廃止や見直しを求める意見書を出すなど、世論と運動が広がっています。


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