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2022年12月5日(月)

主張

内部留保500兆円

ゆがみ是正し賃上げに活用を

 増え続けている大企業の内部留保が初めて500兆円を超えました。この10年間で1・5倍の急増です。労働者の実質賃金(年収)は同期間に24万円も減っています。急速な物価上昇で賃金はさらに目減りしています。大企業が利益をため込み、賃金が上がらない構造によって、日本経済が成長しない脆弱(ぜいじゃく)なものになっています。このゆがみを正し、実体経済を立て直すことが急務です。

中小企業に届く支援こそ

 財務省が1日に公表した2022年7~9月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業の内部留保は9月末時点で505・4兆円でした。第2次安倍晋三政権発足前、12年の同時期と比べると57・3%増えました。

 その間、売上高は9・9%しか増加していないのに経常利益は77%増えました。名目賃金の伸びは7・4%にとどまりました。賃上げを抑制し、大幅なコスト減らしなどで利益を膨らませて内部留保を積み増したことは明らかです。

 安倍政権下で法人税率を連続して引き下げたことも大企業の利益を拡大させました。その一方、大企業役員の報酬は27・6%も増えました。

 実質国内総生産(GDP)は13年度から21年度にかけて0・8%しか伸びていません。大企業を減税などで優遇しても賃上げにつながらず、消費が冷え込んで経済成長をストップさせました。

 アベノミクスで膨らんだ内部留保に時限的に課税し、大企業、中小企業労働者の賃金を引き上げるという日本共産党の提案がますます重要になっています。

 大企業が12年以降に増やした内部留保に年2%、5年間課税する提案です。課税対象から賃上げや「グリーン投資」を控除することで大企業の賃上げと投資を促します。新たに生まれる税収を財源に、中小企業の賃上げを直接支援します。最低賃金を全国どこでも時給1500円以上に引き上げることも可能になります。

 中小企業に対する政府の賃上げ補助(業務改善助成金)は、設備投資で生産性を向上させることが要件です。不況で新規投資の難しい中小企業には使いにくい制度です。コロナ危機への対応として対象を拡大した21年度でも利用実績は3859件と、中小企業全体の0・1%にすぎません。

 社会保険料負担の軽減など中小企業全体に届く支援が必要です。岸田首相は「社会保険料の減免、賃金の直接補填(ほてん)について慎重な検討が必要」(1日、参院予算委員会、日本共産党の田村智子政策委員長への答弁)と後ろ向きです。

正規へ転換は政治の責任

 岸田首相は「構造的な賃上げ」を言うものの、賃金が上がらない構造には手をつけません。最大の原因は、歴代の政権が派遣労働の規制緩和などで正社員を非正規雇用に置き換えてきたことです。厚生労働省の22年版「労働経済白書」も、1990年代末から非正規の増加が賃金の引き下げ要因となってきたと分析しています。

 同一価値労働・同一賃金、均等待遇の原則を労働基準法など法律に明記するとともに、男女の賃金格差を是正しなければなりません。何よりも非正規雇用を正規に置き換える流れをつくる必要があります。そのために法制度の整備に乗り出すのは政治の責任です。


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