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2022年12月4日(日)

きょうの潮流

 「私はアイヌだ。何処(どこ)までもアイヌだ。それで人間ではないという事もない。同じ人ではないか。私はアイヌであったことを喜ぶ」▼日記につづった叫びのことばは、まさにアイヌの“宣言”でした。筆者の知里(ちり)幸恵は、みずからの民族が口づてに伝え継いできたユーカラを記録し、初めて日本語に訳した『アイヌ神謡集』の作者として知られます▼19歳という短い生涯を、アイヌ語を残すことにかけた彼女が亡くなってから今年で100年。明治以降、国から「未開社会」「旧土人」とさげすまれ、同化を強制されてきたアイヌの文化や権利を守るとりくみは今も引き継がれています▼先日も札幌でエカシ、フチと呼ばれる長老への特別支援を国や道に求める署名活動が行われ、アイヌの民族衣装をまとった伝承者が窮状を訴えたばかりです。ところが国会では、特定の民族や性的少数者、女性への侮辱をくり返してきた杉田水脈(みお)総務政務官の言動が問題になっています▼「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん―。完全に品格に問題があります」。自身のブログに書き込んだ悪意と偏見にみちた表現。アイヌの人びとからは「ヘイトスピーチそのものだ」と憤りの声があがっています▼差別を認めない「撤回」は同氏の無反省ぶりを際立たせています。それをわかっていながら政務官に起用し、いまだにかばい更迭を拒む岸田首相の人権感覚も問われます。傷つけられる誇りと尊厳。アイヌとはアイヌ語で「人間」を意味します。


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