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2022年12月3日(土)

きょうの潮流

 公開中の新海誠監督の新作アニメ「すずめの戸締まり」の一場面に次のようなセリフがありました。「こんなにきれいな場所だったんだな」と▼東北を旅する主人公らが福島県の沿岸部で車を降り、海を望む高台から周辺を眺めていた時です。その足元には除染で発生した廃棄物などが入った黒いフレコンバッグ。遠くに見えるのは東京電力福島第1原発のシルエットでしょうか▼11年前、住民は避難を強いられ、見えない放射線によってふるさとを離れざるを得ませんでした。原子炉が炉心溶融し、建屋が水素爆発で壊れ、大量の放射性物質が外に放出されたからです。未曽有の事故です▼なぜ事故が起きたのか。住民が東電や国を相手に裁判をたたかっています。先日、第1原発から半径30キロ圏内に住んでいた福島県南相馬市の住民が、かけがえのないふるさとを奪われたとして、東電に損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が仙台高裁でありました。判決は、東電が事故原因となった大津波が到来する可能性を予見しながら、未然に防止する措置を何ら講じなかったと▼その悪質性をこう指摘します。運転停止に追い込まれる状況をなんとか避けたいなどと「経営上の判断を優先させ」対策を先送りした「重大な責任があった」▼思い当たるのが7月の株主代表訴訟の東京地裁判決。東電には「安全意識や責任感が、根本的に欠如していた」として、旧経営陣に13兆円を超える損害賠償を命じました。事故の責任を問う裁判は続いています。


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