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2022年11月25日(金)

主張

民間の英語テスト

都立高入試への導入中止せよ

 今年度の東京都立高校入試に初めて導入される中学校英語スピーキングテスト(ESAT―J)が27日に実施されようとしています。専門家や保護者らから、公平・公正でないと疑問が相次ぎ、中止を求める声が広がっています。

公平・公正確保されない

 ESAT―Jは問題作成から採点まで教育産業大手ベネッセコーポレーションが行います。受験生はイヤホンを着用し、専用タブレットからの音声などに従い、時間内に答えを吹き込みます。タブレットに録音した音声データはフィリピンに送られ、採点されます。採点者の所属や資格は不明です。

 テスト会場は在籍する中学校ではなく、都立高校などです。約3分の2の中学校が違う自治体の会場で受験します。五つの自治体をまたぎ、1時間以上かけて行く中学校もあります。昨年のプレテストでは1教室で最大20人が受験し、他人の回答が聞こえると指摘されました。今年は1教室最大40人に倍増されます。ベネッセは、遅刻などのトラブルに対応する試験監督は1日限りで簡単だと宣伝し、アルバイト採用しました。ずさんな運営に不安は尽きません。

 入試に最低限必要な公平性・公正性が確保されていないとの不安や懸念は強まる一方です。

 実施主体の都教育委員会はESAT―Jの目的の第一は、公立中学生を対象に「話す」能力を測る到達度テストとして、英語指導改善の参考にすることだと説明します。到達度テストなら各校の自主的な判断に委ねられるもので、都教委は強制できません。しかし、ESAT―Jの結果を入試の合否判定に使うのは、公立中学校にテスト実施を事実上強制することになります。これは教育基本法が禁じる不当な支配にあたります。

 都立高校を受験する人は、都内公立中学生だけではありません。都外在住などでESAT―Jを受験できない生徒がいます。不受験者は入試の筆記で同じ点数の10人程度の平均による推定点がつきます。この方式は、専門家から不合理だと指摘されています。

 ESAT―Jはベネッセの英語4技能検定のGTECと問題構成、問題数、解答時間が全て同じです。都教委はGTECの作問者・採点者との重複を否定せず、採点システムは「事業者の基盤を利用」すると回答しています。GTECを受けている子どもとそうでない子どもで差がつくなどの批判が出ています。ESAT―Jの仕組みはベネッセが「他府県で活用」するとしており、全国に広がる可能性もあります。

 日本人が英語を話すには、2200時間の学習が必要とされます。中学3年間の授業は約420時間です。少人数学級や少人数授業にしたり、教員がゆとりをもって授業準備や工夫をできるようにしたりすることこそ重要です。

反対の声を受け止めよ

 都議会では日本共産党の19人を含む7会派42人で入試への活用中止のための議員連盟が発足しました。保護者や英語教育の専門家が声を上げ、2万人分を超す反対署名が集まり、各地で集会やスタンディングが行われています。保護者や大学教員による公金支出差し止めの住民訴訟も起きました。都教委は、この声を受け止めて入試への活用をやめ、ESAT―J自体をきっぱり中止すべきです。


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