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2022年11月22日(火)

障害者ケア 家族から社会へ

息子の介護 高齢の母

「もう、おしまいに」

 「もう、おしまいにしようと思う」。埼玉県川口市で重度の知的障害のある息子(40代)を介護する女性(70代後半)が苦悩の末につぶやきました。

 女性は自宅で息子のケアを長年担ってきました。障害等の状態が変化したため1人では対応が困難になり、昨年、息子を入院させました。しかし、しばらくして病院から退院を迫られました。

相談するも…

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(写真)障全協会長の新井たかねさん

 「家に連れて帰るのは難しい」。空きが出たら入所させたいと申し込んでいた障害者支援施設「太陽の里」(同県白岡市)に連絡しました。

 定員60人の同施設は満室でした。施設長の園部泰由(やすゆき)さん(49)は、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)会長の新井たかねさん(76)に女性の対応を相談しました。

 園部さんは「本来なら希望する人みんなに入所してほしい」と声を落とします。「せめて、空きはなくても『相談してよかった』と思えるように、次につながるようにしている」

 新井さんが電話をすると女性は「病院から紹介されたのは県外の施設。それでは面会できないし、決断できない」と話し、冒頭の言葉をつづけました。その言葉が気になり、「近いうちに行くから」と電話を切った新井さん。その日の夕方に女性宅を訪ねました。

 玄関先で話を聞き、障害福祉サービスの相談窓口に同行すると約束すると女性は少し安心した様子だったといいます。後日、女性の息子は県内のグループホームに入所できました。

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(写真)障害者支援施設「太陽の里」=2日、埼玉県白岡市

全国で増加し

 いま、障害のある成人の子どもを高齢の親がケアする「老障介護」が全国で増加しています。自身より大きな体の子どもをケアする身体・精神的負担や親亡き後のケアの担い手など多くの問題や課題があります。

 同県で障害者入所施設への入所を希望していても空きがなく待機しているのは1526人(2022年8月現在)にものぼります。「太陽の里」だけでも147人(同)です。

 新井さんは女性との出来事を機会に「老障介護」は家族だけではどうにもならない問題だと認識したといいます。「生まれた子どもの障害がわかると、親はいろいろ苦労しながらも受け入れる。障害のある子どもを育てる仲間や専門職の人に出会い、夢や希望も語り、将来も考えてきた。今、社会的に対応しないといけない緊急課題になっています」

 「老障介護」は当事者だけの問題ではありません。当事者や支援者、実際にケアに携わる人などの視点から、どんな社会が望まれるのか、そのために何ができるのか考えます。(津久井佑希)


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