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2022年11月22日(火)

主張

「1億円の壁」問題

税負担の不公平を早急に正せ

 年間の所得が1億円を超えると、所得税負担率が下がってしまう「1億円の壁」問題が政府税制調査会(首相の諮問機関)で議論されています。以前から指摘されてきた不公平な税負担を無視できなくなった形です。岸田文雄政権は問題を棚上げする姿勢を改め、直ちに是正に踏み出すべきです。

低所得層より軽い負担率

 一般の納税者の所得は、給与や事業所得、年金などが中心です。所得が1億円を超えるような富裕層の場合は、株式への配当や、土地や株式を譲渡して得た所得が多くを占めています。

 株式譲渡益や配当所得益などの所得については、住民税と合わせて一律で20%と非常に低く抑えられています。株取引などによる所得は、給与所得などと分けて税率を計算する「分離課税」となっているため、株式に関わる所得などが多ければ多いほど、全体の税率が低く済むのです。

 個人所得税について議論した政府税調の10月4日の会合では、「1億円の壁」について委員から「公平の観点からもっと深く考える必要がある」「高所得者のところに負担ももう少ししっかりしてもらうようにすることは大切」といった意見が出されました。

 特別委員の諸富徹・京都大学教授は「高額所得者の負担率が低くなっている構造は正当化できるのか疑問。特に社会保険料の負担構造は逆進的であることが改めて明らかになった」「高額所得者層に対する新たな負担の強化を議論しなければいけない」と述べました。

 この日、財務省が提出した資料では、2020年分の所得税の負担率は、給与所得と株式譲渡益などの合計所得金額が5000万円超~1億円の人たちの27・1%をピークに所得が増えるほど減る傾向にあります。

 社会保険料の負担をあわせると税制の不公平さが一層顕著になります。所得税と社会保険料の負担率は所得が5000万円超~1億円の人たちの28・7%をピークに、50億円超~100億円の超富裕層の人たちは17・2%、100億円超の人たちは19・6%となっています。

 年収200万円超~250万円の人たちの負担率は18・7%、250万円超~300万円の人たちは18・3%、300万円超~400万円の人たちは17・9%です。超富裕層の人たちの負担率は低所得の人たちと同等か、それ以下の水準しか、税や社会保険料を支払わずにすんでいるのです。

 鈴木俊一財務相は、17日の参院財政金融委員会で日本共産党の小池晃書記局長の質問に対し、政府税調での所得税の負担構造に問題があるとの議論をふまえて「適切に対応する」と答弁しました。

応能負担の原則徹底を

 岸田文雄首相は、昨年の自民党の総裁選挙で1億円の壁の見直しを表明していましたが、首相になってからは、口をつぐんで議論を棚上げにしてきました。

 税制の大きな役割の一つは、所得の再分配です。そのため所得税に累進課税がしかれています。税を負担する能力に応じて支払う応能負担の徹底が急務です。

 株式配当への課税は少額や低所得者の場合を除き、勤労所得とあわせた総合課税を義務づけ、富裕層の配当には、所得税と住民税の最高税率を適用すべきです。


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