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2022年11月17日(木)

きょうの潮流

 「死刑のはんこを押す」などとあまりにも軽く扱った法相が辞任。その顛末(てんまつ)はこの国の政権が人の命を大切にしないことの象徴のように感じられます。同時に死刑制度についても改めて考えさせられました▼実は死刑を実施している日本は国際的に見ると少数派です。世界の半数以上の国では死刑を廃止しています。OECD(経済協力開発機構)に加盟する38カ国中、死刑制度があるのは日本、韓国、アメリカの3カ国だけ。そのうちアメリカでは半数の州が事実上、死刑を廃止。韓国では25年間、死刑執行をしていません▼一方で、大切な人の命を奪われた遺族が「加害者を死刑に」という感情を抱くこと自体は否定できません。世論調査によると日本では8割の人が、死刑があるのも「やむをえない」と考えています▼作家の平野啓一郎さんは著書の『死刑について』で、自分もかつて「死刑制度があることはやむをえない」と考えていたと明かしています。「死刑廃止派」の人と激論したこともあったそうです▼その平野さんが「廃止派」に変わった理由の一つは、殺人犯となった人の劣悪な成育環境に思いを巡らせ、殺人者を生み出す社会の側の責任について考えたことでした。罪を犯した人間の存在自体を消しても、社会や政治の問題が解決されていなければ同様の犯罪が繰り返されると平野さんはいいます▼被害者を精神的・経済的に支える仕組みをつくることと合わせ、今の死刑の在り方について、より深い議論が求められています。


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