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2022年11月3日(木)

きょうの潮流

 古代ギリシャのプラトンは意外にも芸術否定論者でした。芸術は人を惑わすとして詩人追放論を唱えました。これに対してアリストテレスは、人間や物事を理解するうえで芸術は有用だと擁護しました▼この論争は今も続いています。3年前、あいちトリエンナーレで「慰安婦」像などを展示した「表現の不自由展」をめぐって同じ対立がおきました。中止を求めた政治家たちは、有害な芸術は公共施設から追放すべきだと考えたのです▼最近出た『芸術文化の価値とは何か』(水曜社)には、問題を考えるヒントが満ちています。イギリスの政府系研究機関による6年間の大規模学際研究の最終報告書です。「文化的価値において鍵となるのは、芸術文化体験が個人に内省を促す力である」と強調します▼例えば刑務所で家庭内暴力を描いた演劇を同じ罪の受刑者たちが鑑賞する更生プログラム。受刑者は舞台の片側と反対側に。劇の内容とともに、向かい側の受刑者たちの反応を見ることが自己を省みさせます▼内省を促すのは、芸術文化が「従来の考え方を揺さぶる安全な場を提供する」からだと指摘します。刑務所の例でいえば、一方的な懲罰や訓戒ではなく「複雑で逆説的な、あるいは複数の意味」を持つ場で、受刑者自身が自分で考え始めます▼行政と芸術のかかわりでよく問題になるのは、補助金のあり方です。イギリスは独立した専門家機関による芸術文化への公的助成制度が確立しています。日本もぜひ見習いたい。きょうは文化の日。


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