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2022年11月1日(火)

介護保険改定 負担増・給付減ずらり

社保審部会 論点提示 反対の声に背

「利用控え生じる」「重度化招く」

 厚生労働省は31日、介護保険制度改定に向け議論している社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で、見直しの論点を正式に提示しました。論点は利用料2割、3割負担の対象拡大や要介護1、2の訪問介護などの保険給付外し、ケアプラン有料化など7項目(表)で、利用者・家族や事業者団体の強い反対の声を押し切った内容に対し、委員からは「利用控えが生じる」「重度化を招く」などの反対意見が続出しました。


厚労省が示した介護改悪の論点

  • 介護保険サービスの利用料2~3割負担の対象拡大
  • 要介護1、2の訪問介護などの保険給付外し
  • ケアプランの有料化
  • 老健施設などの相部屋(多床室)の有料化
  • 保険料の納付年齢の引き下げと利用年齢の引き上げ
  • 補足給付の資産要件に不動産を追加
  • 「高所得者」の保険料引き上げ

 論点には、財務省や財界が繰り返し求めている負担増・給付減の項目がずらりと並びました。これらは過去の制度改定の議論で反対の声が強く、提案と見送りが繰り返されてきた経緯があります。次期改定をめぐっても、厚労省が9月に“検討課題”として列挙した当初から反対や懸念の声が噴出していました。

 介護事業所や専門職員などでつくる介護関係8団体は10月21日に連名で、要介護1、2の訪問介護などを保険給付から外せば利用者の自立を阻害して重度化を招くとともに、家族介護の負担を増やし介護離職にもつながるとする改悪反対の要望書を厚労省に提出。31日には、ケアマネジャーの職能団体・日本介護支援専門員協会や生協、農協関連の団体など6団体が連名で、ケアプラン有料化に反対する要望書を出しました。

 同日の部会では、これらの団体の委員が改めて反対を表明。加えて、「誰がどの程度の負担に耐えられるのか根拠が示されていない」(認知症の人と家族の会)、「負担増から利用控えが起こり状態悪化を招かないか懸念される」(民間介護事業推進委員会)といった批判や懸念が上がりました。

 7項目には、一定所得を超える65歳以上の人を「高所得者」とし、保険料を引き上げる案も新たに盛り込まれました。

介護保険制度見直し 七つの論点

負担増・給付減の中身

 厚生労働省が31日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)部会に示した介護保険制度見直しの七つの論点は、いずれも国民に耐えがたい負担増と給付減を押し付ける中身です。

■「軽度者」外し

 保険給付抑制へ財務省や経団連が最も重視するのが、要介護1、2を「軽度者」として訪問介護などを保険給付から外し、市区町村が運営する「総合事業」へ移行させることです。すでに要支援1、2を総合事業へ移行させたことで、保険料を払っているのに必要なサービスが受けられなかったり、介護報酬より単価が低いため介護事業所の経営悪化に追い打ちをかけたりといった問題が生じています。

■利用者負担

 介護保険サービスの利用者負担は原則1割です。自公政権はこれまでの改悪で一定所得以上に2~3割負担を導入してきました。厚労省は今回、医療では75歳以上の窓口負担が2割以上の人が約30%いるのに、介護保険では利用者負担が2割以上の人は8・9%だと主張。10月に窓口負担増を強行した75歳以上の医療改悪を口実に、介護の2~3割負担の対象者を拡大しようとしています。

■対象年齢

 介護保険制度は40歳から保険料を納め、サービスを利用できるのは原則65歳からです。少子高齢化の影響で40~64歳人口の減少と65歳以上人口の増加が進むことを口実に、保険料納付年齢の引き下げと、サービス利用年齢の引き上げが盛り込まれました。

■老健多床室

 自公政権は、制度開始時は保険給付の対象だった特養ホームなどの入所者の部屋代(水光熱費など)を、“在宅で介護保険サービスを利用している人との公平性”を口実に保険給付から外してきました。今回は介護老人保健施設(老健)などの多床室の部屋代を保険給付から外そうとしています。

■ケアプラン

 一人ひとりの状態に応じてケアマネジャーが作成する介護計画(ケアプラン)には現在、利用者負担がありません。ケアプラン作成料が足かせとなって利用を控える人が出ないようにするためです。経団連は有料化を強力に求めており、今回も論点に入りました。

■補足給付

 特養ホームなどに入所(利用)している低所得者の食費・居住費を減額する補足給付制度。昨年の収入・資産要件改悪で多くの入所者を対象外とし月2万~7万円の負担を強いたのに続き、今度は資産要件にこれまでの金融資産に加え、新たに不動産を要件にすることが論点に入りました。持ち家があれば補足給付の対象外となりかねません。

■保険料負担

 65歳以上の介護保険料は、制度開始時の月額2911円が昨年は6千円超と倍以上に高騰(全国平均)。2040年には9千円を突破する見通しです。そこで、「高所得者」の負担を引き上げ低所得者の負担増を抑える方向性が示されました。国庫負担割合を引き上げるなどの抜本策には手をつけず、高齢者間で痛みを分け合えというものです。


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