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2022年10月31日(月)

主張

米政権の新NPR

「核対核」は破滅しか招かない

 米バイデン政権は27日、核戦略の基本方針となる「核態勢の見直し(NPR)」を「国家防衛戦略」などとともに公表しました。中国やウクライナ侵略を続けるロシアなどに、強大な核戦力で対抗する姿勢をあらわにしました。

先制不使用は採用せず

 バイデン政権下で初のNPRは「効果的な核抑止力」と「強力な拡大抑止力」を持ち続けるとし、「戦略的抑止は、国家の最優先の任務だ」と強調しました。バイデン大統領が一時検討した核の先制不使用宣言は採用せず、通常兵器での攻撃にも核で対応する態勢を維持しました。トランプ前政権の海上発射型核巡航ミサイル開発は中止しますが、潜水艦装備の核弾道ミサイル小型化は維持するなど核兵器近代化も進めます。核兵器に固執する立場は明らかです。

 ロシアのプーチン大統領が核戦争の犠牲もいとわずに、核威嚇を繰り返している状況をみれば、「核抑止」という考えは破綻しています。中国も「米国の核の恫喝(どうかつ)は通用しない」(外務省の会見)と反発し、「戦略的抑止」の強化を図るとしています。核対核の対抗は、破滅的な衝突の危険を高めるものでしかありません。

 「核抑止」政策の放棄を求める声は世界で広がっています。6月の核兵器禁止条約第1回締約国会議のウィーン宣言は、「核抑止力」を「核兵器が実際に使用されるという脅威」「地球規模の破滅的な結果をもたらす危険性に基づいている」と厳しく非難しました。8月の核不拡散条約(NPT)再検討会議でも批判が相次ぎました。核兵器の使用もその威嚇も、国連憲章と国際人道法に反します。

 NPRは、核兵器禁止条約を「効果がない」と敵視する一方、「抑止だけでは核の危険は減らない」と述べざるを得ませんでした。核軍縮を交渉する義務(NPT第6条)を引用し、同条約への誓約も明記しました。禁止条約を支持する世界の流れをさらに発展させてこそ、「核抑止」論を乗り越え、核兵器の脅威を根絶する展望が開けます。バイデン政権は「核抑止」への固執を改め、かつてオバマ政権が表明した「核兵器のない世界の平和と安全」の達成に向け踏みださなければなりません。

 NPRが「インド太平洋地域における強力で信頼できる核抑止」を特別に重視していることも見過ごせません。「核抑止任務を支援する同盟国とパートナーの非核能力を活用する」と述べ、同盟国を核攻撃の支援に利用しようとしていることは重大です。米国の核攻撃機を通常の戦闘機で護衛する北大西洋条約機構(NATO)のような態勢も含まれます。そのような作戦に自衛隊機が参加すれば、日本は核攻撃の共犯者です。唯一の戦争被爆国としてあるまじき行為であり、断じて許されません。

いまこそ核廃絶の先頭に

 林芳正外相は、NPRを「強く支持」し、「日米同盟の抑止力を強化していく」と強調しました。米国の「核抑止力」=「核の傘」への依存は、被爆国としての外交力を失わせるとともに、日本とアジアの安全を損なうだけです。世界が核使用の危険に直面する今こそ、「ヒロシマ・ナガサキ」の体験にたって、核兵器が「絶対悪の兵器」であることを世界に訴え、核兵器禁止条約に参加するなど核兵器廃絶の先頭に立つべきです。


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