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2022年10月28日(金)

主張

介護保険改定議論

利用抑制の加速は許されない

 岸田文雄政権が介護保険の見直しを進めています。2024年の3年に1度の改定に向けて、今年12月にも結論を出す予定です。見直し議論を行っている厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会には9月末、利用料の引き上げや介護サービス削減などが検討課題として示されました。これらが実施されれば、コロナ禍で疲弊し、物価高騰に苦しむ高齢者や家族はさらに負担を強いられ、必要な介護を受けられなくなる人も続発しかねません。介護の現場からは負担増とサービス削減に反対の声が相次いでいます。国民を苦しめる介護保険改悪は撤回すべきです。

負担増と給付削減が次々

 厚労省は見直しの具体的項目に▽サービス利用料の2割負担と3割負担の対象拡大▽要介護1、2の訪問・通所介護の保険外し▽ケアプラン作成の有料化▽老健施設などの多床室(相部屋)の室料有料化―などを挙げています。

 介護保険の利用料は2000年の制度発足から1割負担が原則でした。しかし、15年に一定所得以上の人は2割負担とされ、18年には3割負担も導入されました。厚労省は、「余裕」がある人が対象などと負担増を正当化しましたが、実際は負担が増えて介護サービスを削ったり、施設から退所したりした人は少なくありません。

 1割負担でも経済的に苦しく利用サービスを減らす人がいます。財務省の財政制度等審議会は原則2割負担を提言しています。そんなことになれば、さらに多くの人がサービスを受けるのをあきらめてしまいます。利用抑制に拍車をかける負担増は許されません。

 要介護1、2の訪問・通所介護を保険対象から外し、市区町村が運営する「総合事業」に移行させる案にも批判が上がっています。

 総合事業は、自治体によってサービスの内容や担い手の確保に大きな差があり、全ての利用者に同じ質のサービスが提供されない危険があります。全国老人福祉施設協議会など介護事業所や介護の専門職員らでつくる介護関係8団体は21日、要介護1、2の訪問・通所介護を総合事業に移行する見直しに反対する要望書を厚労省に提出しました。要望書では、要介護1、2の人は認知機能が低下し、排せつ介助などの介護給付サービスがなければ在宅での自立生活が困難と訴えています。

 認知症などは専門家の初期段階での気付きや早期の対応が進行を抑えることにつながります。要介護1、2の訪問・通所介護の保険外しは、介護状態を悪化させる高齢者を増やし、かえって介護給付費を膨張させることになります。

社会保障の拡充こそ急務

 介護サービスを受ける大前提のケアプラン有料化は、利用控えを加速します。老健施設やショートステイの相部屋は低所得の人が多く利用します。有料化によって負担に耐えられない人は行き場を失う事態になりかねません。

 75歳以上の医療費窓口負担が10月から「2倍化」され、高物価の中での年金削減は高齢者に大打撃です。追い打ちをかける介護の負担増と給付削減をストップさせることは急務です。介護保険改悪はコロナで疲弊している介護現場に一層の苦難を強いる重大な逆行です。大軍拡推進と大企業優先の政治から社会保障を拡充させる政治への転換が不可欠です。


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