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2022年10月18日(火)

主張

自殺対策白書

いのちを守る支援強化が急務

 政府が14日閣議決定した「自殺対策白書」(2022年版)によれば、21年の女性の自殺者は20年より42人増え7068人となり2年連続で増加しました。コロナ感染が拡大した20年、女性の自殺者が19年と比べ935人と大幅に増えました。状況は依然深刻です。男性の自殺者は1万3939人(21年比116人減)、全体は2万1007人(同年比74人減)でした。主要7カ国の中で最悪の水準が続いています。困難を抱える人たちが自ら命を絶つ事態に追い込まれない社会にしていくために、政治の果たす役割が不可欠です。

女性に大きな矛盾が集中

 日本の自殺者は03年の3万4427人をピークに減少傾向となり、19年は2万169人でした。しかし、20年は11年ぶりに増加に転じました。押し上げたのは女性の自殺者の急増です。政府は、コロナ禍の失職や収入減が背景にあることを認めました。女性が7割を占める非正規雇用で雇い止めやシフト減が相次ぎました。

 22年版白書は、15~19年のコロナ感染拡大前の平均自殺者数と20~21年の自殺者数について職業や同居人の有無などを比較・分析しました。コロナ禍で激変した労働市場と無職女性の自殺者数との関係を調べたところ「有効求人倍率の低下が無職の女性自殺死亡率の上昇と統計的に関係」しており、「生活困窮対策や社会的セーフティネットの拡充などの強化が求められる」と記しました。

 同居人のいる有職の女性でみると、20~21年は20歳~59歳を中心に自殺者が増加しました。夫妻ともにフルタイム就業の場合、仕事のある日の家事労働は妻が夫の2倍になったという調査結果もあることから、有職女性の自殺増の背景には「仕事と家庭の両立にかかわる生活環境の変化等が影響している可能性」を指摘しました。

 専門家から、配偶者の暴力、育児・介護疲れなども自殺につながりかねないとの指摘も出ています。女性に負担をかけている日本社会のゆがんだ構造がコロナ禍でさらに女性に犠牲を強いて、命の危機にまで追い詰めていることは重大です。ジェンダー平等社会の実現は一層切実になっています。

 19年の女子中学生の自殺者46人に対し20年は69人、21年は74人へと増加しました。女子高校生は19年の80人が、20年は140人、21年は145人と大幅に増えました。コロナ禍の行動制限で周囲に相談できなかった影響などの反映とも言われています。若者からのSOSを受け止め、孤立させない相談体制の確立・強化が急がれます。

 自殺対策白書と同時に閣議決定された政府の自殺総合対策大綱は、高水準の自殺者数、子どもの自殺者数増などを挙げて「非常事態はいまだ続いており、決して楽観できる状況にはない」と強調しています。命を守るため、政府の真剣な取り組みが求められます。

防ぐために力を合わせて

 自殺の多くは「追い込まれた末の死」です。個人の問題ではありません。世界保健機関は「多くが防ぐことのできる社会的な問題」と提起しています。社会全体で自殺のリスクを減らすための努力を続ける必要があります。貧困や生活苦を個人の自己責任にする分断をあおる政治でなく、一人ひとりのいのちを大切にする政治をつくっていくことが重要です。


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