2022年10月7日(金)
主張
拡大する汚職
利権まみれの五輪 徹底解明を
東京五輪・パラリンピック大会をめぐる汚職事件が深刻な広がりをみせています。4日には出版大手KADOKAWAの角川歴彦前会長が、大会組織委員会の高橋治之元理事への贈賄罪で起訴されました。すでに紳士服大手AOKIホールディングスの青木拡憲前会長も起訴され、広告会社・大広の役員らも逮捕されており、スポンサー契約に関する疑惑は底なしです。なぜ不正がまかり通ったのか。五輪の運営にあたった組織委とともに、国策として五輪を推進した政府の責任も免れません。
不透明性が不正の温床に
東京地検特捜部の捜査では、高橋元理事の収賄額は、AOKI、KADOKAWA、大広の三つのルートで計約1億4200万円になるとされます。これ以外に、駐車場大手パーク24の本社も強制捜査されました。パーク24の社外取締役は組織委元副会長で日本オリンピック委員会前会長の竹田恒和氏です。同氏は9月、地検特捜部に参考人として任意聴収され、高橋元理事が理事に就任した経過などを聞かれたと報じられています。組織委元会長の森喜朗元首相も任意の事情聴取を受けました。
森元首相は、高橋元理事の設けた会食の際、AOKIの青木前会長に紹介されたと言われています。青木前会長は森元首相に病気見舞いの名目で200万円を渡したと供述したと報道されました。
広告大手・電通の時代にスポーツビジネスを手掛けた高橋元理事は、海外要人だけでなく、日本の政界にも広い人脈を持つとされます。電通を退職した高橋元理事がどのような経過で組織委理事に取り立てられ、組織委の中でどんな役割や権限を持っていたのか。政治家とのかかわりはどうだったのか。曖昧にできない問題です。
高橋元理事の受託収賄容疑は、各社のスポンサー契約などに関係するものです。不正行為を許した背景として、組織委そのものが抱える構造的な体質があります。その一つが、透明性を欠いた運営です。五輪の収支について公表するのは全体像で、具体的な中身については「民間との契約は公開できない」との姿勢に終始しました。組織委は6月に解散しましたが、経費に関する契約書などの重要文書は開示義務がないとして、今後も公表しない方針です。このような閉鎖性が汚職の温床になったことは疑う余地はありません。
組織委は「ガバナンス改革」を掲げましたが、形ばかりでした。スポンサー契約などを実質的に取り仕切っていたのは電通の出向社員がほとんどを占める部局で、高橋元理事はそこに大きな影響力を持っていました。組織委にかかわる必要な資料を全面公開させ、機構の仕組みや運営方法を徹底的に検証することが欠かせません。
国会での解明欠かせない
岸田文雄首相は五輪疑惑解明を検察任せにし、政府として動こうとしません。安倍晋三元首相が招致運動の前面に立つなど政権が旗を振ってきた問題で沈黙を続けるのは無責任です。国内外で五輪への信頼は失墜しており、2030年札幌五輪招致をする状況ではありません。
日本共産党と立憲民主党は今国会で、五輪汚職を解明し政治の責任を明らかにすることで合意しました。利権まみれの大会の闇を究明することは政治の役割です。