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2022年9月29日(木)

主張

90メートルの超低空飛行

従来の日米合意も破る無法だ

 日米両政府は、米海兵隊の輸送機MV22オスプレイが低空飛行訓練をする際の最低高度を500フィート(約150メートル)から300フィート(約90メートル)に下げることで合意しました。これまでの日米合意は、人口密集地以外の地域で「最低安全高度」を150メートルとする日本の航空法に準じ、500フィート以上としてきました。今回の合意はこれをほごにし、さらに危険な低空飛行を可能にするものです。こうした無法な行為は決して許されません。

常態化に道開く恐れ

 在日米軍の法的地位などを定めた日米地位協定の実施に関する日米の協議機関である日米合同委員会が26日に決めました。

 主な内容は、▽沖縄の米海兵隊普天間基地に配備しているオスプレイの訓練を県外に移転するに際し、高度300フィート以上500フィート未満の飛行訓練を行う▽実施場所は沖縄を除く日本国内の住宅地などの上空を避けた区域▽訓練は敵レーダーによる捕捉や対空火器による攻撃からの回避、緊急事態での兵士などの捜索・救難活動のために実施する▽期間は9月27日から10月18日まで―としています。

 日本の航空法は、航空機の最低安全高度以下での飛行を禁じています。最低安全高度は同法施行規則で、人口・家屋密集地域で周囲の最も高い障害物から300メートル、それ以外の地域で地上から150メートル以上などと定めています。

 ところが、最低安全高度の規定は、日米地位協定の実施に関する航空法の特例法によって在日米軍には適用されないことになっています。実際、米軍機による最低安全高度以下の低空飛行が各地で確認されています。

 これに対し日米両政府は、在日米軍は低空飛行訓練をする際、日本の航空法と同一の高度規制を適用していると説明してきました。2012年のオスプレイの沖縄配備に当たっては、日米合同委員会の合意に、同機の低空飛行訓練は地上から500フィート以上の高度で行い、人口密集地域の上空は避けると明記していました。

 12年の同合意は500フィートを下回る高度で飛行せざるを得ないこともあるとしていましたが、それは「運用の安全性を確保するため」としていました。ところが、今回の合意で低空飛行訓練の最低高度を300フィートまで下げたのは「実践的な訓練の実施を通じ、(米軍の)即応性を向上させる」ためとあからさまです。そのため今回に限らず、今後、常態化の恐れがあります。

 オスプレイの沖縄県外への訓練移転は、10月1日から14日まで北海道で予定している陸上自衛隊と米海兵隊との日米共同訓練(レゾリュート・ドラゴン)に組み込んで実施することが別に発表されています。米海兵隊のオスプレイ6機程度が参加予定です。最低高度300フィートの低空飛行訓練は、この中で行われるとみられます。

米の対中戦略のため

 陸自は今回の日米共同訓練について、米海兵隊の「遠征前進基地作戦」(EABO)などを踏まえたものと説明しています。同作戦は、日本の南西諸島やフィリピンなどの島々に多数の小規模部隊を展開させて前進拠点を構築し、中国軍を攻撃するというものです。

 中国との戦争を想定した米国の軍事戦略に基づき、戦闘即応体制を強化する低空飛行訓練や日米共同訓練は中止すべきです。


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