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2022年9月15日(木)

主張

園バス放置死事件

悲劇繰り返さない対策を急げ

 静岡県牧之原市の認定こども園で、猛暑の中、送迎バスに長時間置き去りにされた3歳児が命を失うという痛ましい事件が起きました。昨年7月、福岡県中間市の保育園で同様の事件がありました。教訓が生かされなかったことに、大きな衝撃が広がっています。

あってはならぬ対応なぜ

 昨年の事件後、国は▽子どもの出欠状況を保護者にすみやかに確認する▽送迎バスの乗車時、降車時に座席や人数の確認を行い、職員間で共有する―などの安全管理の徹底を全国の保育園、幼稚園、認定こども園に通知しました。

 今回事件が起きた園では、これらはことごとく守られていなかったとされます。命を預かる現場ではあってはならないずさんさです。なぜ通知が徹底されなかったのか。国として検証することは欠かせません。悲劇を繰り返さないために、原因究明と責任の所在を明確にする必要があります。

 国の子ども・子育て政策も問われます。この間、就学前の子どもが過ごす施設の状況は大きく変容しています。

 保育所の大幅増設を求める声が政治を動かし、保育施設の整備・拡充は一定進み、待機児童数は減少傾向です。しかし、政府の対策の中心は、規制緩和と企業参入促進という安上がりの施策です。

 「安全が脅かされる」という保育現場の声を無視し、政府は、常勤保育士から短時間保育士への置き換えを拡大するなど人員配置の緩和を繰り返してきました。15年から「保育新制度」を導入し、公的責任を後退させ、保育士の有資格者を認可保育所基準の半数の配置でもよいとするなど、さまざまな基準の施設を増やし、「保育の質」の格差を拡大させました。

 基準が低い施設が増える一方、認可保育所の中核を担ってきた公立保育所は、14年から7年間で1460カ所も減少しました。さらなる廃止を計画している自治体もあります。職員の非正規化も進み、現場の人手不足は深刻です。

 保育施設内で起きた重篤な事故は21年に1872件発生しました。保育新制度導入時(15年)の4倍以上の増加です。死亡事故も毎年起きています。園庭のない保育園が増え、散歩中の園児の置き去りが頻発するなど、子どもの安全を脅かす事態も広がっています。

 保育の安全管理に不可欠な、自治体に実施が義務付けられている年1回の実地監査は、実施率が全国平均で6割にとどまっています。しかし、政府は実地による指導監査義務をなくし、書面やリモート点検でも認めるという一層の規制緩和を狙っています。保育の質の向上に逆行する姿勢です。

 政府が「こどもまんなか社会」を掲げて23年度設置する「こども家庭庁」の概算要求には、保育の質の改善につながる事項は一つも盛り込まれていません。

現場が求める質の向上を

 4~5歳児の保育士配置基準は、70年以上一度も改善されていません。日本は主要国でも極めて低い基準のままです。ゆとりもない中、子どもたちの安全は保育現場の必死の努力に任されています。

 職員の数を増やすことは、子どもの命と育ちを守ることに直結します。国が責任をもって安心・安全の保育を実現する政治に切り替えていくことが重要です。


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