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2022年9月5日(月)

主張

内部留保過去最高

物価高のいま賃上げに活用を

 財務省が1日に発表した2021年度の法人企業統計調査で資本金10億円以上の大企業の内部留保が過去最高を更新して484・3兆円(22年3月末)になったことがわかりました。経常利益は前年度比29%増の60・2兆円と、これも過去最高です。

 コロナ感染の中でも大企業は円安の恩恵を受け、輸出や海外事業の収益を増やし、賃上げに回さずにため込んでいます。労働者、国民がコロナ禍や物価高騰で苦しんでいる今こそ内部留保を活用すべきです。

課税実現は待ったなし

 大企業の利益は、法人税減税など優遇策を進めたアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)のもとで増え続けてきました。アベノミクスがスタートした12年度と比べると、21年度の経常利益は1・67倍です。内部留保は1・45倍です。支払った法人税(地方税を含む)は、安倍政権が税率を連続して引き下げたため、1・28倍の伸びにとどまっています。

 同期間に株主への配当金は2・02倍、役員報酬は1・21倍です。これに対して賃金は1・05倍と、ほぼ横ばいです。格差は広がる一方です。

 この間、労働者は2度の消費税増税で暮らしに打撃を受け、最近の物価高騰によって実質賃金は低下しています。物価は4月以来4カ月連続で前年比2%を超す上昇となり、実質賃金は4月以降、マイナスが続いています。秋以降、さらに多くの品目で値上げが予定され、物価高はいっそう深刻化する恐れがあります。

 22年の民間主要企業の賃上げ率は厚生労働省の集計で2・2%しかありません。大企業が内部留保の一部を取り崩すだけで大幅な賃上げは可能です。

 日本共産党はアベノミクスで増えた内部留保に年2%、5年間の時限的課税を行い、それによって生まれる総額10兆円程度の税収を中小・中堅企業の賃上げ支援にあてることを提案しています

 8月末までに各地の地方最低賃金審議会が答申した22年度の最賃引き上げ額は加重平均でわずか31円増でした。1日8時間働けば暮らせる賃金にするには全国一律で時給1500円の最賃が必要です。そのためには中小・中堅企業への支援が欠かせません。

 内部留保課税は、課税対象額から賃上げ額や、気候変動対策に逆行しない国内設備投資額を控除します。賃上げやグリーン投資を促し、経済の持続可能な発展につなげる効果があります。大企業ばかりを優遇する不公平な税制をただすことにもなります。

臨時国会を開いて議論を

 岸田文雄政権は「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」を唱えますが、物価高による国民の苦難に無策です。内部留保課税の提案に対しては「二重課税という指摘もある」として検討すら拒んでいます。

 行き過ぎた大企業減税の一部を返させる内部留保課税は「二重課税」などではありません。所得税、住民税を払ったうえに取られる消費税こそ「二重課税」です。

 国民の苦難をよそにいつまでも臨時国会の開催を拒否することは許されません。野党の開会要求に応じ、賃上げを実現するために政治がどう責任を果たすかを議論すべきです。


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