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2022年9月4日(日)

主張

外国人技能実習

見直しではなく制度の廃止を

 法務省が、外国人技能実習制度の見直しの検討を始めました。古川禎久前法相は、見直しのポイントに(1)政策目的・制度趣旨と運用実態にかい離のない仕組み(2)人権が尊重される制度にする―ことを挙げました(7月29日)。技能実習法が2015年の国会で審議されて以来、日本共産党が厳しく指摘してきた技能実習制度の問題点を、法務省がようやく認めた形です。新たに就任した葉梨康弘法相は、有識者会議の議論を見守ると述べました(8月10日)。深刻な人権侵害を生み続ける技能実習制度は、見直しでなく廃止すべきです。

人権侵害うむ構造的矛盾

 技能実習制度は、「技能移転」による「国際貢献」を名目としながら、実態は、外国人を低賃金・単純労働力として受け入れるという構造的矛盾を抱えています。残業手当の不払い、ピンはね、強制貯金、パスポート取り上げ、高額の保証金や違約金、強制帰国、性暴力などの異常な実態が横行し、大きな社会問題になっています。

 同制度について日本弁護士連合会は「人権侵害は構造的問題に起因する」として、早急な廃止を求めていました。国連自由権規約委員会は、性的虐待、労働に関する死亡、強制労働を指摘し、米国務省は、労働搾取や人身売買への懸念を表明しています。

 技能実習法では、技能実習生は例外的な場合を除いて職場移転の自由がなく、人権侵害の根源である支配従属関係を解消することはできません。悪質なブローカーや法外な保証金を排除する制度的担保もありません。

 21年の技能実習に関する労働基準監督署の監督指導数9036件のうち、関係法令違反数は7割超の6556件にのぼります。主な違反事項は安全基準が2204件、労働時間が1443件、割増賃金が1345件でした。

 技能実習生の失踪件数は、15年に5803人、18年には9052人と増加し、21年に7167人と多数で推移しています。

 あるベトナム人女性実習生は、妊娠を理由に解雇されることを恐れ、誰にも相談できないまま、熊本県内の自宅で双子を死産しました。遺体を自室に置いたことを死体遺棄罪に問われ一、二審で執行猶予付きの有罪判決を言い渡されましたが、女性は無罪を主張して最高裁に上告しています。

 厚生労働省の調べでは、20年までの3年間で、妊娠や出産を理由に実習を中断した637人のうち、実習再開を確認できたのは11人にすぎません。出入国在留管理庁と厚労省は実態調査に乗り出しました。妊娠や出産の想定をはじめ、人間としての当然の権利を守る技能実習生の支援体制を整えることが急務です。

入管法の抜本改正不可欠

 技能実習制度だけでなく、出入国管理法に基づく特定技能制度は、5年を上限として雇用契約や在留期間を短期で繰り返す外国人の非正規労働者をつくり出しています。外国人労働者を雇用の調整弁とするものにほかなりません。

 外国人労働者問題で必要なのは、基本的人権が保障される秩序ある受け入れと、共に生活するための支援体制です。外国人労働者への人権侵害をやめさせ、人間らしく生きられるために、技能実習制度の廃止と、入管法の抜本的改正を求めます。


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