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2022年8月27日(土)

主張

国葬に2.5億円

国民の批判に耳傾けないのか

 岸田文雄内閣は9月27日に予定している安倍晋三元首相の国葬に約2億5000万円の税金を投じることを閣議決定しました。国葬を定めた法律は今の日本にはありません。法的根拠がないまま多額の国費の支出を決めたことは重大です。評価が大きく分かれる安倍氏の国葬については異論や疑問が相次ぎ、メディアの世論調査では反対が多数となっています。国民の声に耳を傾けず、実施に向けて準備を進めることは許されません。弔意を国民に押し付ける危険は払しょくされていません。安倍氏の国葬は中止すべきです。

法的根拠なく巨費を投入

 安倍氏の国葬費用は全額国費でまかないます。2022年度予算の予備費から2億4940万円を支出するとしました。東京の日本武道館で行い、会場の設営などに約2億1000万円、会場やバスの借り上げ料などに約3000万円かかるとしました。公式に招く参列者は最大6000人規模で試算しました。会場周辺の警備にあたる警察官の人件費は含まれておらず、実際の国費はさらに膨れ上がると指摘されています。

 20年10月に行われた中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬の費用は約2億円で、うち約9000万円を国が負担しました。この時は、コロナ感染が広がるさなかに、特定の政治家の葬儀に多くの税金が使われたことについて、疑問や批判が上がりました。

 戦後の国葬は1967年の吉田茂元首相の時だけです。当時も佐藤栄作首相が法的根拠のないまま、閣議決定で実施し、問題になりました。68年の国会では、野党から「内閣の思いつきでやられることは賛成しかねる」と予備費からの支出も含めて厳しい批判が出されました。

 75年の佐藤元首相の時は、国葬は断念され、内閣・自民党・国民有志主催の「国民葬」でした。決め手は、「法的根拠が明確でない」との内閣法制局見解だったとされます。「戦前のような国葬令が存在しないだけでなく、国葬という以上、三権(立法、行政、司法)が合同で行うべき」で、吉田元首相の場合のように閣議決定だけでは「内閣葬」にすぎない、といった点が考慮されたと報道されました(「朝日」75年6月3日付)。

 岸田首相は、安倍氏の国葬の決定は内閣法制局と調整していると主張しますが、75年当時の解釈との関係についての説明は一切ありません。「さまざまな機会を通じて丁寧に説明を続けていきたい」(首相、今月10日の記者会見)と言うのなら、一刻も早く臨時国会を召集し、審議を尽くすべきです。政府が独断で突き進むことは、国民の分断と亀裂を拡大させることにしかなりません。

民主主義守るためにも

 岸田首相は安倍氏を長期政権で実行力があったなどと持ち上げ、国葬を正当化します。安倍政権美化を国民に押し付けるものです。「(国葬を)やらなかったらバカ」(24日、二階俊博・自民党元幹事長)との暴言は撤回すべきです。

 改憲の旗を振り、立憲主義破壊の政治を重ねてきた安倍元首相の罪は消えません。国葬は戦前、国民を侵略戦争に駆り立てる手段に使われました。戦後の憲法下で国葬令が失効したのは、民主主義と相いれないからです。国葬を復活させてはなりません。


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