2022年8月25日(木)
つづく食品高騰 病院給食を直撃
国は食事療養費引き上げを
とどまるところを知らない食品の高騰が、入院中の患者を食の面から支える給食の現場に多大な影響を及ぼしています。苦境にある現場の声を聞きました。(西口友紀恵)
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北海道釧路市にある釧路協立病院(108床)。給食は病院の厨房(ちゅうぼう)でつくる直営で、病院のほかサービス付き高齢者住宅など3事業所に1日あたり計約400食を提供しています。
同病院の渡邊拓也食養科長(管理栄養士)は「コメ以外ほぼすべての食材が値上がりしている」と話します。
「目立つのは魚介類と植物油で、昨年同時期に比べて約2割増。油は3~4年前に比べて2倍に。一部の冷凍野菜は15%、鶏・豚肉も7月から10%上がりました」
今がギリギリ
メニューや使う食品の変更など必死の自助努力でしのぐ日々。「それも今がギリギリ。漁業の地元なのにサケなど魚介類はどの種類も上がり、使える食品の幅が狭まっています。どこまで値上がるのか先が見えないのが一番の悩みです」。
民医連道央事業協同組合給食事業部は、札幌市内で2カ所のセントラルキッチン(集中調理施設)などを運営。病院や介護・福祉施設などに1カ月で約15万食を提供しています。地域は札幌、苫小牧、旭川など広範囲にわたります。
同事業部の岡千陽栄養士長(管理栄養士)は「4~6月は、昨年同時期比で1食あたりの食材費が5%上がりました。年額に換算すると材料費増だけで2千万円超に。大変な打撃です」と話します。
「1円でも安い代替品を探し栄養バランスを保った食事を提供するために、懸命に努力しています。コロナ禍で経営困難な病院や介護事業所に値上げを求めることはできません」
食材費も増加
根本には、国が1994年以降28年間、医療機関への食事療養費を据え置いてきた結果、病院の給食部門の多くは直営、委託の運営形態を問わず赤字構造となっていることがあります。他方、患者の自己負担額は増え続けています。
岡さんは「現場で感じる矛盾」として次の点も挙げます。
病院・介護事業所への食事は、厚生労働省が5年毎に改定を行っている「日本人の食事摂取基準」に基づいて提供されています。
現在の2020年版では「誰もがより長く元気に活躍できる社会を目指」すとされ、とくに高齢者の低栄養予防の観点からエネルギーやたんぱく質の目標量が引き上げられました。
「この指針に基づいて食材バランスのよい献立を作成するためには、当然食材費も増えますが、国による手当はありません。一方で食品、光熱費などの高騰ラッシュです」
同給食事業部では7月、取引額の大きい卸業者2社から、約80品目、平均で14%の値上げが行われました。今後も連続的な値上げが待ち構えています。
「厚生労働相は、同省が定めた基準を守っている医療・介護現場の血のにじむような努力と苦労に真摯(しんし)に向き合い、しっかりと手当をしていくべきです」と岡さん。
全日本民医連は、岸田文雄首相と厚労相あてに医療機関への食事療養費の引き上げの実施と、その際患者の負担額は増やさないことを求めています。