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2022年8月13日(土)

沖縄知事選まで1カ月 構図鮮明

新基地反対・デニー知事VS国いいなり・自公候補ら

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(写真)2期目の勝利に向けて事務所開きで決意を語るデニー知事=7月31日、那覇市

 沖縄と日本の未来を左右する県知事選(25日告示、9月11日投票)まで1カ月を切りました。玉城デニー知事のほか、自民党などが擁立する佐喜真淳氏や、前衆院議員の下地幹郎氏が立候補を表明。地元メディアでは「三つどもえのたたかい」と報じますが、真の構図は、同県名護市辺野古の新基地建設反対を貫く「オール沖縄」のデニー県政か、国いいなりで新基地を推進する県政か―です。

 4年前の県知事選の出馬会見で、「翁長雄志知事の遺志を引き継ぎ、辺野古新基地建設阻止を貫徹する」と決意表明したデニー氏。その言葉通り、辺野古の埋め立て承認撤回をめぐって国と裁判でたたかい、軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更申請の不承認を行うなど知事の権限を行使して公約実現に尽力してきました。

 在任中、新基地建設の賛否をめぐり県民投票を実施し、71・7%の反対の民意を示しました。デニー知事自身が全国を回り、沖縄の米軍基地の実態を発信するトークキャラバンを実施。訪米して、辺野古の軟弱地盤の問題などを伝え、米国政府や関係機関に新基地建設見直しを要請してきました。米国でも「(辺野古への滑走路建設は)物理的に困難である」(米国議会調査局、21年4月)など変化が表れはじめています。

 一方、佐喜真氏は4年前の知事選で辺野古の賛否を明らかにしませんでしたが、今回は「辺野古移設を容認する」と初めて容認を表明。9日の政策発表会見では辺野古の工期を短縮させ、「2030年までに普天間基地の返還を実現する」と言及。工期短縮の具体策は明言しませんでしたが、工期を短くするには、県が不承認としている設計変更申請をただちに承認し、国と係争中の裁判を取り下げるなど大浦湾の工事に着手することが不可欠です。そうなれば、国いいなりで基地建設を加速させることになります。

 ただ、軟弱地盤は水面下90メートルまでおよんでいます。国内での改良実績は65メートルまでしかなく、工期短縮以前に、そもそも工事そのものが不可能です。科学的な根拠が全くないだけでなく、佐喜真氏が「私は、軟弱地盤について中身詳細の全てを承知していない。ただ政府は問題ないという話だ」(9日)と述べるように、軟弱地盤の問題を理解しておらず、きわめて無責任です。

 下地氏は、既に陸地化が進んでいる辺野古側にオスプレイを移駐して「活用する」とし、普天間基地も返還せずに「米軍と共同使用する」と明言。そのうえ馬毛島(鹿児島県西之表市)に訓練を移転させると主張しています。米軍が自由勝手に使える基地を三つに増やす最悪の政策を掲げています。

県民の平和希求の思いを

「戦場二度と」外交訴え 「オール沖縄」のデニー知事

軍拡主張し緊張さらに 国言いなりの新基地推進派

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(写真)新基地建設が強行されている名護市の辺野古・大浦湾=1月4日

 岸田自公政権は、9条改憲、軍事費2倍化、敵基地攻撃能力などとセットで辺野古新基地建設を含めた沖縄の基地強化を狙っています。自民党が知事選候補者の選考中に候補者に配布したとされる、辺野古新基地建設を含む「日米両政府が合意した再編計画を容認する」と明記した誓約書の存在が明らかになっています。政府・自民党は、「踏み絵」を踏ませるようなやり方で国いいなりの県政をつくり、新基地建設へ正面突破をはかっています。

孫子の代まで危険にさらす

 佐喜真氏は、辺野古「容認」の理由として「普天間飛行場の危険性の除去」を挙げています。しかし、辺野古に「耐用年数200年」とされる巨大基地ができれば、「危険性の除去」どころか、子や孫の世代がこれまで以上の危険にさらされます。

 また、出馬の理由として、ウクライナ侵略や台湾情勢など「安全保障環境の変化」を挙げ、5月の自民党県連の知事候補者選考演説会では、「しっかりとした防衛力が必要だ」と軍拡を主張しています。

 しかし、「軍事対軍事」で対応し緊張を高めれば、行きつく先は戦争です。台湾情勢が緊迫し、米軍も最前線に立つ中、不測の事態が起これば沖縄が真っ先に戦場(いくさば)になります。そうなれば、住民が避難する場所や手段もありません。石垣市の試算では民間航空機が1日45機運航した場合、約10日で全市民が避難できると見込みますが、激しい戦闘になれば民間機を飛ばすことは不可能です。フェリーについても、沖縄戦で疎開する学童を乗せた対馬丸が撃沈し、多くの子どもたちが犠牲になった歴史があります。自衛隊は住民保護の主担任でないことは国民保護計画で明確に位置付けられています。軍事で平和も命も守られないことは明らかです。

 一方、デニー知事が本土復帰50年を節目に日米両政府に提出した「新たな建議書」は、地域の緊張を高める軍拡について「悲惨な沖縄戦を経験した県民の平和を希求する思いとは相いれない」と強調し、平和外交を求めました。沖縄を二度と戦場にしないためには大軍拡ではなく、外交で緊張を緩和する以外に道はありません。

激烈な選挙戦 組織力もカギ

 デニー知事の支持率は約6割(7月6日、「琉球新報」)と高水準を維持していますが、基礎票は多くの組織票を持つ自公が圧倒しています。参院選の比例得票をみると、「オール沖縄」4党が20万7092票だったのに対し、自公は23万1479票と上回りました。

 こうした基礎票を掘り起こすため自公は、今回初めて知事選と同日投票となる統一地方選で大量立候補を進めています。8月3日時点でオール沖縄が110人ほどなのに対し、自公は200人ほど擁立。補完勢力を加えれば、この差は今後さらに大きくなるとみられます。自民党の茂木敏充幹事長は7月26日の会見で、県知事選は「どうしても勝たなければならないたたかいだ」と強調し、「圧倒的な運動量が必要」であり、「党本部としても最大限の支援活動を行う」と表明。参院選以上に政府・自民党などが総力をあげる激烈な選挙となります。論戦力に加え、組織力が問われます。


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