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2022年8月5日(金)

6中総と世界の本流

――ウクライナ問題をめぐる大逆流に抗して

緒方靖夫

写真

(写真)緒方靖夫副委員長

 第6回中央委員会総会の幹部会報告は、ロシアのウクライナ侵略を契機とした大逆流とたたかった参議院選挙で、全党が党綱領を踏まえた理性的論陣で奮闘し、論戦をリードしてきた活動の意義を明らかにしました。幹部会報告を受けた討論では、当初押し込まれた情勢を、果敢な論戦で押し返し、情勢を変えたまさに共産党らしい多くの感動的な活動が報告されました。

 事態の本質を正確につかみ、力による解決ではなく、国連憲章のもとでの平和秩序の回復という解決の大道を示したたたかいは、「ロシア=共産主義」などの大掛かりな偽りの宣伝と正面から対決し、打破する論戦を進める上でも大きな力となりました。それは、テレビで繰り返された、ウクライナのロシア占領地で鎌とハンマー入りの赤旗が立てられる映像に、“やっぱり共産党ではないか”と錯覚してしまう有権者もいる中での、実に厄介で困難を伴うたたかいでもありました。

 これらを踏まえたうえで、国際分野の担当者として、論戦の意義、ますます重要となる今後の活動について、いくつかの点を考えてみたいと思います。

「外交ビジョン」を力に

 まず、東アジアを平和と協力の地域にするための党の「外交ビジョン」です。これは、これまでの東南アジア諸国連合(ASEAN)本部や加盟国との長年の交流と政策研究により準備され、参院選挙で必ず大きな争点となるだろうと、1月の党旗びらきで提起されたものでした。その後、ウクライナでの戦争が起こり、党がその都度表明した立場と合わせて、最も有効な政策として平和への展望を切りひらくものとなりました。「備えあれば憂いなし」の格言通りでした。

 これは、軍事力一辺倒の政治外交路線と対決し、論戦の焦点を鮮明にする上で大きな役割を果たしました。軍拡と排除の論理に対して、全党が9条に基づく平和外交、包摂的な外交努力という情理ある立場を対置し、押し出したことは、極めて重要でした。

 また、岸田政権による「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と国民をどう喝する軍拡キャンペーンに対して、全党が押し返し、反転攻勢をはかるうえで最も重要なツールとなりました。

 内容的には決して易しくない政策でしたが、こうした政治外交努力、国のあり方が現実に東南アジアに存在している事実は極めて重く、弁士の方々が、そこを捉えて、それぞれ工夫して説得力を持ってわかりやすく述べられていたことが印象的でした。

 私はこの間、ASEANの国々の大使や代表と会談した機会に、「今回の選挙ほどASEANについて述べた選挙はなかったですよ」と述べましたが、まさに実感でした。

国際的な道理の響きあい

 選挙の論戦で提起した課題は、今後のウクライナ戦争の帰趨(きすう)に直結するものです。その重要な点を、いくつか述べたいと思います。

 第1に、ウクライナ戦争での一番の危険は、「民主主義対専制主義のたたかい」のスローガンで世界を分断することだという点です。

 国連総会が、140カ国以上の賛成でロシアの侵略を非難する決議を採択するなど、国連憲章を守れと訴えている、この国際社会の結束を維持し、広げていくことが重要になっているときだからこそ、党は世界を分断することの深刻な危険性を指摘し、確固たる論陣を張ってきました。

 それは、4月に行われた参院予定候補者会議での志位委員長の発言が皮切りとなりました。その後、国際的には、すでに5中総で紹介されたように、シンガポールのリー・シェンロン首相が世界を「善対悪」に区分してはならないという強い言葉で反対論を展開しました。そして、6中総で紹介されているように、ニュージーランドのアーダーン首相が世界の分極化に反対し、包摂的な外交努力を訴えました。ニュージーランドは、日本、韓国、オーストラリアとともにアジアにおける北大西洋条約機構(NATO)パートナー国で、6月のNATO首脳会議に参加している国です。

 他にも、さまざまな立場の国が、はからずもわが党と一致する見解を述べているのです。連携しているわけでもないのですが、ここに、国際的道理が響きあい、重なりあうことが見事に示されています。

排除ではなく包摂の外交努力

 第2に、この機に乗じて、ロシアを弱体化させ、国際社会から排除しようとする誤った試みに断固反対するたたかいです。

 今秋、主要20カ国(G20)、東アジアサミット、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がインドネシア、カンボジア、タイで開催されます。米国、日本など一部西側諸国がロシアを排除せよと圧力を加えるもとで、議長国3カ国が、すでに5月に共同声明を出し、排除ではなく、包摂的枠組みを堅持すると表明しています。

 インドネシアのジョコ大統領は、今年のG20サミット議長国の首脳として、主要7カ国(G7)首脳会議に参加する傍ら、ウクライナにもロシアにも訪問し、中国など関係国を訪れるなど、分断に反対し「包摂性の回復を」と活発な外交活動を展開しました。G20参加国だけでなく、発展途上国をはじめ世界全体にとってのこの課題の重要性を行動で力強く訴えています。

 これらは当然のことであるにしても、やはり理性の声です。それは、国際社会の唯一無二の基準が国連憲章であるという立場に立つものです。党の世界論との響きあいがここでも示されていると思います。

 わが党はロシア批判の厳しさでは人後に落ちませんが、ロシア排除は誤っていると指摘し、包摂的な国際社会のあり方を適宜に提起したことは、世界とアジアの平和と安定への貢献となっています。

党の綱領、歴史の力

 第3に、世界の本流と合致した道理ある提起ができるのは、党綱領があるからであり、6中総報告が最後に述べている100年の歴史に蓄積された党の特質によるものです。

 今回の事態に即して言えば、ロシアによる無法を前に「力の論理」が声高に叫ばれる中でも、党は、「世界の構造変化」が21世紀の今、力を発揮しているという大局的な世界観に立ち、いかなる覇権主義にも反対し、国連憲章に基づく平和秩序を確固として求めるという綱領的立場を貫いているということです。

 党綱領は「いかなる覇権主義にも反対する」と明記しています。世界にはそれぞれの立場から特定の国を覇権主義と批判する国も党も多くあります。例えば米国だけ、中国だけ、ロシアだけというように。しかし、「いかなる覇権主義にも反対する」党は、わが党しかありません。残念ではあっても現実です。同時にそれは、世界でその立場にあることは、党史に裏づけられた私たちの大きな誇りです。

 ソ連、ロシアの覇権主義とのたたかいでも、干渉とたたかい、はね返してきたたたかいの蓄積があるので、今回の事態でも批判は最も的確で深く、最も厳しいものです。党の歴史の蓄積と世界論により、世界を見る瞳を曇らせない力を党に与えているのです。

 加えて述べれば、わが党のたたかいには試練はつきものです。思い起こせば、1989年の天安門事件の際には、わが党への街頭での温かい声援が冷たい突風となりました。さらにさかのぼれば、67年総選挙では、「文化大革命」を使った反共攻撃とたたかってきた歴史があります。試練は党を鍛え、強くするものです。選挙での論戦を生かし、気概をもって前進していきましょう。

 (党副委員長・国際委員会責任者)


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